ネズミの糞はどう掃除する?掃除機を避ける理由と安全な清掃手順

家の中でネズミの糞を見つけても、乾いた状態のまま掃除機で吸ったり、ほうきで掃いたりするのは避けた方がよいでしょう。

乾燥した糞や尿で汚染されたほこりを舞い上げると、排泄物由来の微粒子を吸い込む可能性があるためです。

米国CDCの住宅向け清掃ガイダンスでは、ネズミの尿・糞・巣材を未処理のまま掃除機やほうきで処理せず、消毒剤等で十分湿らせてからペーパータオルなどで回収するよう案内しています。

日本の厚生労働省も、ハンタウイルス感染症について、病原体を保有するげっ歯類の排泄物を含む粉じんの吸入が感染経路になり得ると説明しています。

ただし、ハンタウイルス肺症候群は日本国内で患者発生の報告がなく、腎症候性出血熱も1999年以降、日本国内で患者発生は確認されていません。

したがって、一般家庭でネズミの糞を見つけたからといって感染症を過度に恐れる必要はありませんが、「乾燥した排泄物を舞い上げない」という清掃方法は守ると考えるのがよいでしょう。

まだ本当にネズミの糞か分からない場合は、先に症状・痕跡から原因を確認することをおすすめします。

目次

ネズミの糞を掃除するときに避けたいこと

清掃前に、次の方法は避けてください。

  • 乾いた糞をそのまま掃除機で吸う
  • ほうきで勢いよく掃く
  • エアダスターや高圧の空気で吹き飛ばす
  • 素手で拾う
  • 糞を潰して種類を確認する
  • 顔を近づけて臭いを確認する

特に掃除機やほうきは、一見手軽ですが、乾燥した細かな汚れを空気中へ舞い上げる可能性があります。

ネズミの糞を掃除する基本手順

手順 行うこと
1 清掃前に場所・量を写真で記録する
2 可能な範囲で換気する
3 ゴム・プラスチック製の手袋を着用する
4 糞や尿跡を消毒剤等で十分湿らせる
5 製品表示で指定された時間を置く
6 ペーパータオル等で静かに回収する
7 袋等へ入れて密閉し、地域のごみルールに従って廃棄する
8 周囲の硬い表面を清掃する
9 手袋を外し、石けんと流水で手を洗う

1.掃除する前に糞の場所と量を記録する

すぐ掃除する前に、スマートフォンで写真を撮っておくと、その後の状況判断に役立ちます。

記録したいのは次のような情報です。

  • どこにあったか
  • おおよその個数
  • 一か所に集中しているか
  • 毎日増えているか
  • 周囲にかじり跡や黒い擦れ跡があるか

清掃後に再び同じ場所へ新しい糞が出れば、現在もネズミが活動している可能性が高くなります。

2.閉じた空間なら可能な範囲で換気する

CDCは、住宅、倉庫、納屋などネズミがいた建物を清掃するとき、清掃前にドアや窓を開けて換気するよう案内しています。

同ガイダンスでは30分程度の換気を推奨しています。

これは米国のげっ歯類感染症対策を前提とした安全側の指針ですが、日本の住宅でも、長期間閉鎖されていた物置や部屋を清掃するときの参考になります。

ただし、天井裏や床下へ無理に入り込んで換気する必要はありません。

3.ゴム・プラスチック製の手袋を着ける

糞や尿汚れを直接手で触らないよう、ゴム・ビニール・ニトリルなどの手袋を使用します。

手に傷がある場合は、特に直接触れないようにしてください。

清掃後は、手袋を着けたまま手袋表面を洗える場合は洗い、その後適切に外してから、石けんと流水で手を洗います。

4.乾いた糞を先に十分湿らせる

清掃で重要なのは、乾いた糞をそのまま動かさないことです。

家庭用の消毒剤などを製品表示に従って使用し、糞と周辺の尿汚れが十分濡れるようにします。

CDCでは、家庭用消毒剤または希釈した塩素系消毒液で十分湿らせる方法を案内しています。

ただし、日本で販売されている塩素系製品は濃度や用途が製品ごとに異なります。

自己判断で濃度を作らず、製品ラベルに記載された用途・希釈方法・接触時間を優先してください。

塩素系薬剤を他の洗剤と混ぜない

塩素系製品を使用する場合は、酸性タイプの洗剤などと混ぜないでください。

危険なガスが発生する可能性があります。

別の洗剤や消毒剤を同時に使用するのではなく、一つの製品を説明書どおりに使用します。

消毒剤の選び方や素材ごとの注意は、次のAR-180「ネズミ 消毒 必要」で詳しく扱います。

5.指定された時間を置いてから回収する

濡らした直後にすぐ拭き取るのではなく、使用している消毒剤のラベルに指定された接触時間を守ります。

CDCでは、一般的な例として十分湿らせた後に5分、または製品表示に指定された時間を置くよう案内しています。

製品に別の指定がある場合は、そちらを優先してください。

6.ペーパータオルなどで静かに回収する

糞が十分湿ったら、ペーパータオルや使い捨ての布などで静かに拭き取ります。

この段階でも、強くこすって周囲へ飛ばす必要はありません。

使い終わったペーパー等も一緒に袋へ入れます。

7.回収した糞は袋へ入れて密閉する

回収した糞、汚れたペーパー、使い捨て清掃用品などは、ビニール袋等へ入れて密閉します。

実際のごみの区分や出し方は自治体によって異なるため、地域の家庭ごみルールに従ってください。

子どもやペットが触れる場所へ一時的に放置しないようにします。

8.糞を回収した周囲も清掃する

目に見える糞だけを拾って終わりではありません。

尿や微細な汚れが周辺へ付着している可能性があるため、床、棚、引き出しなどの硬い表面も、使用する清掃・消毒製品の表示に従って処理します。

食品を扱う棚や調理台の場合は、使用した薬剤が食品接触面に使えるものか確認し、必要に応じて仕上げの水拭き等も製品表示に従います。

9.最後に手を洗う

手袋を外した後は、石けんと流水で手を洗います。

「手袋をしていたから手洗いは不要」とは考えない方がよいでしょう。

掃除機は絶対に使えない?

問題になるのは、未処理の乾燥した糞・尿汚れ・巣材を直接掃除機で吸うことです。

CDCは、消毒されていないネズミの排泄物を掃除機やほうきで処理しないよう明記しています。

糞そのものを安全に湿らせて除去した後、通常の床清掃をどう行うかは表面素材や汚染範囲によって変わります。

最初の除去工程では、掃除機より湿式での回収を優先してください。

ほうきで掃くのも避ける

乾いた糞をほうきで集めると、目に見えないほこりが舞い上がる可能性があります。

少量だからといって、乾燥状態のまま掃かないようにします。

高圧スプレー・エアダスターで吹き飛ばさない

糞を落とすために圧縮空気を吹き付ける方法も避けてください。

汚れを広範囲に飛散させる可能性があります。

特に天井裏や機械周辺では、見えない場所へ汚染を広げることにもなります。

マスクは必要?

少量の家庭清掃について、CDCの基本手順ではまずゴム・プラスチック手袋と、乾燥した汚れを舞い上げない湿式清掃が中心です。

一方、ネズミが大量発生した住宅や長期間放置された建物では、より強い個人防護具や適切な呼吸用保護具を推奨しています。

つまり、一般的なマスクを着けただけで、大量の乾燥糞を掃除機で吸ってよいという意味ではありません。

大量汚染で呼吸用保護具まで必要になる規模なら、家庭DIYの範囲を超えている可能性を考えます。

天井裏のネズミ糞は自分で掃除できる?

点検口から安全に手が届く位置に少量だけある場合と、天井裏の奥一面に糞がある場合ではリスクが違います。

天井裏には、

  • 踏み抜き
  • 転落
  • 電気配線
  • 釘・建築部材
  • 断熱材
  • ネズミの巣・死骸

などの危険があります。

糞を掃除するためだけに狭い天井裏へ入り込む必要はありません。

断熱材に糞や尿が染み込んでいる場合

断熱材は床や棚のような硬い表面とは異なります。

CDCは、露出した断熱材がネズミの尿や糞で汚染されている場合、袋へ入れて撤去する方法を案内しています。

住宅用断熱材は施工状態によって簡単に取り外せないこともあるため、広範囲に汚染している場合は専門業者や住宅業者への相談を検討してください。

エアコン・空調ダクト周辺に糞がある場合

ネズミが空調ダクトや換気経路へ入り込んでいる場合は、通常の床清掃とは分けて考える必要があります。

CDCも、空調・換気ダクトにネズミの侵入痕跡がある場合は専門サービスへの相談を案内しています。

ダクト内部へ家庭用掃除機を入れて大量の糞を吸うような処理は避けた方がよいでしょう。

大量のネズミ糞はDIY清掃しない方がよい場合がある

数個の糞と、長期間ネズミが繁殖していた建物の大量汚染では対応が異なります。

CDCでは、次のような重度のネズミ汚染に対して追加の防護措置を案内しています。

  • 大量のネズミがいた建物
  • 長期間空いていた住宅
  • 多数の糞・尿・巣材がある場所
  • ネズミ媒介感染症が確認されている環境

このレベルでは、防護服、ゴーグル、適切な呼吸保護具などが必要になる場合があります。

一般家庭でそこまでの装備が必要な状態なら、専門業者へ相談する判断が現実的です。

キッチン・食品棚で糞を見つけた場合

キッチンでは、糞を取り除くだけでなく、食品汚染にも注意します。

ネズミにかじられた食品、開封された袋、糞尿が直接付着した可能性のある食品は、安全性を優先して廃棄を検討します。

缶、瓶、密閉された硬質容器などは、外側を適切に清掃できる場合があります。

清掃後は食品を密閉容器や扉付き収納へ移し、ネズミが再び餌を得られないようにします。

布・衣類に糞尿が付いている場合

衣類、寝具、布製品などは硬い床とは清掃方法が異なります。

CDCでは、汚染の可能性がある衣類・寝具等は洗剤と温水で洗濯し、十分乾燥させる方法を案内しています。

素材の洗濯表示も確認してください。

段ボール・紙類が汚染されている場合

紙や段ボールは液体で十分清掃しにくい素材です。

糞尿で明らかに汚れていて、保存する必要がないものは廃棄を検討します。

書類・本など捨てられない物が汚染している場合は、硬い床と同じ処理を無理に行わず、汚染範囲や保存価値に応じて専門的な清掃を検討してください。

糞を掃除した後にまた出たらネズミはまだいる可能性がある

清掃には衛生管理だけでなく、現在もネズミが活動しているか確認する意味もあります。

CDCも、清掃後に再び糞が出れば活動中のネズミが存在することを示す材料になるとしています。

掃除した場所を翌日以降も確認してください。

次の状態があれば、掃除だけではなく駆除・侵入口対策へ進みます。

  • 新しい糞が増える
  • 夜間に物音がする
  • 食品を再びかじられる
  • 壁際に新しい黒い擦れ跡が出る
  • 同じ場所でネズミを目撃する

「糞を掃除した=ネズミ対策完了」ではない

糞はネズミ被害の結果です。

掃除だけを続けても、ネズミが家に入り続けていれば糞は再発します。

清掃後は、

  • 餌・水を減らす
  • 巣材・隠れ場所を減らす
  • 現在いる個体への対処
  • 侵入口の確認
  • 活動停止後の封鎖

へ進みます。

糞の種類を確認したい場合は清掃前に記録する

糞の大きさ・形・場所は、ネズミか別の動物かを判断する手掛かりになります。

清掃前に写真を撮り、可能なら定規などを近くに置いて大きさを記録します。

東京都多摩立川保健所では、ネズミと思われる動物の糞や毛などについて、事前相談のうえ密閉容器や袋へ入れて持参すれば、可能な範囲で同定・助言を行っています。

地域の保健所によって相談内容は異なるため、利用する場合は事前に確認してください。

日本でハンタウイルスを過度に恐れる必要はない

インターネットで「ネズミの糞はハンタウイルスが危険」といった情報を見ることがあります。

厚生労働省によると、ハンタウイルス肺症候群は北米・中南米などで発生していますが、日本国内では患者発生の報告はありません。

また、別のハンタウイルス感染症である腎症候性出血熱についても、日本では過去に実験動物由来の患者発生がありましたが、1999年以降は患者発生が確認されていません。

したがって、日本の住宅でネズミ糞を見つけた場合に、ハンタウイルス感染を前提として不安を煽るのは適切ではありません。

一方、厚生労働省は、ハンタウイルスの感染経路としてネズミ等の排泄物に汚染された粉じんの吸入を挙げています。

そのため、感染症の有無にかかわらず、乾燥した排泄物をわざわざ空気中へ舞い上げない清掃方法を選ぶことには意味があります。

清掃後に体調不良が出た場合

ネズミの排泄物への曝露後に発熱、強い体調不良、呼吸器症状などが出た場合は、清掃作業をしたことやネズミへの曝露があったことを医療機関へ伝えて相談してください。

症状だけから自分で原因をネズミ媒介感染症と判断する必要はありません。

専門業者へ相談したい状態

  • 天井裏や床下の奥に大量の糞がある
  • 広範囲に尿汚れ・強い臭いがある
  • 断熱材が糞尿で汚染されている
  • 空調ダクトへ侵入している
  • 多数の巣材・死骸がある
  • 長期間空き家だった建物を清掃する
  • 毎日大量の新しい糞が出る
  • 高所・狭所へ入らないと清掃できない

業者へ依頼する場合は害獣・害虫駆除業者の選び方、費用の確認は害獣・害虫駆除の費用と見積もりも参考にしてください。

よくある質問

ネズミの糞を掃除機で吸ってもよいですか?

未処理の乾燥した糞を直接掃除機で吸うのは避けてください。CDCは、糞・尿・巣材を掃除機やほうきで処理する前に、消毒剤等で十分湿らせるよう案内しています。

ネズミの糞をほうきで掃いてもよいですか?

乾燥したまま掃くのは避けた方がよいでしょう。細かな汚れを舞い上げないよう、先に湿らせてペーパー等で回収します。

ネズミの糞は素手で拾っても大丈夫ですか?

素手では触らず、ゴム・プラスチック製の手袋を使用してください。

アルコールをかければよいですか?

清掃・消毒剤には製品ごとに対象となる微生物、使用濃度、接触時間、使用できる素材が異なります。「アルコールなら何でもよい」とはせず、製品表示に従ってください。薬剤の選び方はAR-180で詳しく扱います。

ネズミの糞に漂白剤を使えますか?

CDCでは塩素系消毒液も選択肢としていますが、日本の家庭用製品は濃度が異なります。必ず製品表示に従い、他の洗剤と混ぜないでください。

ネズミの糞は何袋に入れて捨てればよいですか?

糞と使用済みペーパー等が外へこぼれないよう袋へ入れて密閉します。家庭ごみの分別・出し方は自治体によって異なるため、地域のルールを確認してください。

マスクをすれば掃除機で吸ってもよいですか?

いいえ。マスクの有無にかかわらず、未処理の乾燥糞をわざわざ掃除機で舞い上げる方法は避けます。

天井裏の糞も自分で掃除できますか?

点検口から安全に処理できる少量と、天井裏の奥に大量堆積している状態は分けて考えます。高所、狭所、断熱材汚染、大量の糞尿がある場合は専門業者への相談を検討してください。

掃除した翌日にまた糞がありました

現在もネズミが活動している可能性があります。掃除だけを繰り返さず、侵入口・餌・巣・通り道を確認し、駆除と再侵入防止へ進んでください。

ネズミの糞掃除は「乾燥したまま舞い上げない」が基本

ネズミの糞を見つけたときは、乾燥した状態のまま掃除機やほうきで処理しないことが重要です。

可能な範囲で換気し、手袋を着用し、糞・尿汚れを消毒剤等で十分湿らせ、製品表示の接触時間を守った後、ペーパー等で静かに回収します。

清掃後は周辺の硬い表面を処理し、使用した物を適切に廃棄して手を洗います。

一方、天井裏や床下の奥、大量堆積、断熱材・空調ダクトの汚染などは、家庭で少量の糞を拭き取る清掃とは条件が違います。

また、清掃した後に新しい糞が再び出る場合は、ネズミが現在も活動している可能性があります。

糞を安全に清掃することと、ネズミの侵入そのものを止めることは別の作業として考え、再発時は侵入口・駆除・予防対策へ進んでください。

参考にした公的・一次情報

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この記事を書いた人

住宅で発生する害獣・害虫トラブルについて、公的機関・自治体・専門団体・学術情報などを確認しながら情報を整理しています。症状から原因を考え、安全な対処や専門業者へ相談する判断材料を提供することを目的としています。

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