賃貸でトコジラミが出たら誰が払う?大家・入居者の負担判断と連絡手順

賃貸住宅でトコジラミが見つかったとき、駆除費を大家・貸主が払うのか、それとも入居者が払うのかは一律には決まりません。

判断材料になるのは、主にトコジラミがどこから持ち込まれた可能性が高いか、入居前から発生していた可能性があるか、他の住戸や共用部にも被害があるか、発見後すぐ管理会社へ連絡したか、賃貸借契約にどのような定めがあるかです。

トコジラミは旅行バッグや衣類、中古家具などに付着して持ち込まれることがある一方、集合住宅では物の移動や建物内の隙間を通じて別の場所へ広がる場合もあります。

そのため、「自分の部屋で最初に見つかった=自分が持ち込んだ」とも、「建物の中にいる=大家負担」とも断定できません。

賃貸でトコジラミを見つけたときの順番
  1. 虫体・血糞・発見場所・日時を写真で記録する
  2. 家具や寝具を別室へむやみに移動しない
  3. 管理会社・大家へできるだけ早く書面で連絡する
  4. 賃貸借契約書・害虫駆除に関する特約を確認する
  5. 自室だけか、隣室・上下階・共用部にも発生していないか確認してもらう
  6. 専門業者の調査報告書と内訳付き見積書を取得する
  7. 誰がどこまで負担するか確認してから施工する
  8. 駆除後は再点検まで行う
目次

トコジラミの駆除費は大家・入居者のどちらが払う?

賃貸住宅の費用負担は、原因によって考え方が変わります。

状況 費用負担を考えるときの方向性
入居直後から大量のトコジラミ・血糞等がある 入居前からの発生可能性を調査。貸主側負担を検討する材料になる
旅行・出張後に発生した 入居者の荷物から持ち込まれた可能性を調査
中古家具・古着等を入れた後に発生した 入居者側の持ち込みが明確なら借主負担となる可能性が高まる
複数住戸で同時期に発生している 建物全体の調査・管理が必要。貸主・管理側での対応を検討
隣室・上下階から広がった可能性がある 発生源調査が必要。自室だけの問題として処理しない
原因が分からない 自動的にどちらか一方の負担にはできない。契約・調査結果をもとに協議
発見後、長期間放置して被害が大きくなった 拡大した部分について入居者の管理・通知状況が問題になる場合がある

実際の契約・事実関係によって判断は変わるため、この表だけで法的な負担者を確定するものではありません。

法律ではどう考える?

貸主には必要な修繕を行う義務がある

民法606条では、賃貸人は、賃貸物の使用・収益に必要な修繕を行う義務を負うと定めています。

一方で、借主の責任によってその修繕が必要になった場合は、この限りではありません。

国土交通省の賃貸住宅標準契約書も、貸主が住宅使用のために必要な修繕を行う一方、借主の故意・過失によって必要になった修繕は借主負担とする考え方を採用しています。

ただし、トコジラミ駆除費そのものが常に民法606条の「修繕費」として扱われるという意味ではありません。

トコジラミの発生原因、建物全体の状況、契約内容、施工内容などを含めて判断します。

借主には早く知らせることも重要

民法615条は、賃借物に修繕が必要な場合には、借主が貸主へ遅滞なく通知することを定めています。

トコジラミ駆除がそのまま同条の「修繕」となるかは個別判断ですが、賃貸住宅では発生を確認した段階で早く管理会社・大家へ知らせることが重要です。

トコジラミは増えると駆除範囲・施工回数・費用が増えることがあり、物を移動することで生息場所が拡大する場合もあります。

発見したのに長期間知らせず被害が広がった場合は、「発生させた責任」とは別に、被害拡大を防ぐための管理が適切だったかが問題になる可能性があります。

ケース1:入居直後にトコジラミが出た場合

入居して数日〜短期間で多数のトコジラミや血糞などが見つかった場合は、入居前から発生していた可能性を確認します。

たとえば、

  • 入居初日から刺咬被害がある
  • 家具をほとんど搬入していない段階で発見した
  • 壁・巾木・既設設備などに多数の血糞や抜け殻がある
  • 前入居者や隣室でも発生情報がある

といった事情があれば、管理会社・大家へそのまま伝えます。

ただし、古そうな血糞があったというだけで「確実に入居前からいた」と自己判断することは避けます。

可能であれば専門業者に生息状況を確認してもらい、調査報告を残します。

ケース2:旅行・出張後に発生した場合

トコジラミは羽がなく、自力で長距離を飛んで住宅へ侵入する虫ではありません。

台東区や東京都は、トコジラミが荷物・衣類などに付着して屋内へ持ち込まれることを案内しています。

横浜市も、旅行や出張で使ったバッグ、家具や物資などを介した持ち込みに注意するよう呼びかけています。

そのため、

  • 旅行から帰った直後
  • 宿泊施設を利用した直後
  • 中古家具を購入した直後
  • 古着・中古品・荷物を大量に持ち込んだ直後

に発生し、その経路が明確である場合は、入居者側の負担と判断される可能性が高くなります。

ただし、「最近旅行した」というだけで原因を確定することもできません。

ケース3:隣室・上下階にもトコジラミがいる場合

集合住宅では、自室だけを見るのでは不十分な場合があります。

大阪市は、トコジラミが衣類・鞄・家具などの物を介して生息場所を広げるほか、壁の隙間や天井裏を歩いて移動する場合もあると案内しています。

そのため、

  • 隣室でも同時期に発生している
  • 上下階でも発生している
  • 共用部でトコジラミが確認された
  • 駆除しても短期間で再発する

場合は、管理会社へ建物内のほかの住戸・共用部の状況も確認してもらう方がよいでしょう。

発生源が別住戸や管理側の範囲にある可能性が高い場合には、自室の入居者だけへ駆除費全額を負担させることが妥当か、改めて検討する必要があります。

ケース4:どこから来たのか分からない場合

実際には、このケースも少なくありません。

トコジラミは小さく、少数の段階では発見しにくいうえ、荷物・衣類・家具など様々な物に付着します。

そのため、発見した時点で「誰が持ち込んだのか」を証明できないことがあります。

原因不明の場合は、

  • 入居した時期
  • 最初に見つけた日
  • 最近の旅行・宿泊歴
  • 中古家具等の搬入歴
  • 他住戸の発生状況
  • 発生範囲
  • 専門業者の調査結果

を整理して、貸主・借主間で費用負担を協議することになります。

原因が分からないから必ず大家負担、または必ず入居者負担という一般ルールはありません。

管理会社が費用を払うの?

管理会社へ連絡することと、管理会社自身が駆除費を負担することは別です。

賃貸住宅では、管理会社が大家・貸主の代わりに、

  • 入居者からの申告を受ける
  • 大家へ報告する
  • 駆除業者を手配する
  • 他室の状況を確認する
  • 施工日程を調整する

といった窓口になることがあります。

最終的な費用負担は、通常、貸主と借主の契約関係や発生原因をもとに決められます。

管理会社へ電話したときは、「業者を手配してください」だけでなく、調査費・駆除費を誰の負担として進めるのかも確認してください。

契約書に「害虫駆除は借主負担」と書いてあったら?

まず実際の賃貸借契約書を確認します。

国土交通省は、現在締結している賃貸借契約については、原則として契約内容に沿って取り扱うとしています。

一方、東京都の賃貸住宅トラブル防止ガイドラインでは、通常の原状回復義務を超える特別な負担を借主へ課す特約について、

  • 特約に客観的・合理的な理由があること
  • 借主が通常以上の負担を負うことを認識していること
  • 借主がその負担をする意思表示をしていること

などが重要とされています。

したがって、「害虫はすべて借主負担」という一文を見つけたからといって、原因や契約時の説明を確認せず直ちに高額な駆除費全額を支払う必要があると断定することはできません。

具体的な契約条項に争いがある場合は、不動産・法律の相談窓口へ確認してください。

自分で先に駆除業者を呼んでもよい?

賃貸では、できるだけ先に管理会社・大家へ連絡した方がよいでしょう。

自分で10万円、20万円以上の高額な施工を契約した後で、

「大家に請求すればよいと思っていた」

となっても、費用負担について合意がなければトラブルになる可能性があります。

また、建物全体に発生している場合、自室だけを施工しても再侵入する可能性があります。

緊急に業者へ調査を依頼する場合でも、可能であれば、

  • 管理会社へ連絡した日時
  • 管理会社の回答
  • 調査だけなのか施工まで行うのか
  • 調査費はいくらか
  • 施工前の見積金額

を残しておきます。

発見したら家具や寝具を別の部屋へ動かさない

費用負担を確認する前であっても、被害を広げない対応は必要です。

台東区は、トコジラミを発見した場合、物の移動を最小限にして生息範囲を広げないよう案内しています。

特に、

  • ベッドを別室へ移す
  • 寝具を共用廊下へそのまま出す
  • ソファを別の部屋へ移す
  • 衣類を袋に入れず他室へ運ぶ

といった対応は、発生範囲を広げる可能性があります。

施工前の荷物整理は、駆除業者の指示に従って行う方が安全です。

くん煙剤を使ってから管理会社へ連絡してもよい?

大量発生が疑われる場合は、自己判断でくん煙剤を使用する前に相談する方がよいでしょう。

東京都や大阪市は、一般的なくん煙殺虫剤を使用することで、トコジラミが薬剤を避けて別の場所へ移動し、生息範囲を広げる場合があると注意しています。

集合住宅で他室へ拡散する可能性も考え、発生場所をなるべく維持したまま管理会社・専門業者へ伝えます。

費用負担を話し合うために残したい証拠

大家・入居者のどちらが負担するかで争いになったとき、「いつ、どのような状態だったか」が重要になります。

次の資料を残しておくと整理しやすくなります。

  • 虫体の写真
  • 血糞・卵・抜け殻の写真
  • 発見した場所
  • 最初に刺された日
  • 最初に虫を発見した日
  • 管理会社へ連絡した日と内容
  • 入居日
  • 旅行・中古家具等の搬入時期
  • ほかの住戸の発生情報
  • 専門業者の調査報告書
  • 施工内容が分かる見積書

口頭だけでなく、メールや管理アプリなど記録が残る方法でも連絡するとよいでしょう。

見積書は「駆除一式」ではなく内訳を確認する

トコジラミ駆除は複数回施工になる場合があり、費用が高額になることがあります。

見積書では、

  • 現地調査
  • 薬剤施工
  • 物理的な回収
  • 熱処理
  • 再施工
  • 再点検
  • 家具・寝具等の処理
  • 保証

がどこまで含まれているか確認します。

誰が費用を払うかを決める前に、「何にいくら払うのか」を明確にすることが重要です。

駆除費用そのものを確認する場合は害獣・害虫駆除の費用・相場、依頼先を比較する場合は業者選びを参考にしてください。

退去時にトコジラミ駆除費を請求されることはある?

可能性はありますが、入居者が必ず負担するわけではありません。

民法621条では、賃借人は退去時に、通常使用による損耗・経年変化を除き、自分の責任によって生じた損傷を原状回復する義務を負います。

国土交通省の原状回復ガイドラインも、借主の故意・過失、善管注意義務違反などによって生じた損耗・損傷を借主負担とする考え方を示しています。

たとえば、入居者がトコジラミを持ち込んだことが明確で、発見後も放置した結果、建物内へ大きく被害が広がった場合には、退去時の費用負担が問題になる可能性があります。

一方、入居前からの発生や他室からの移動など、入居者の責任とはいえない場合まで当然に全額負担となるわけではありません。

トコジラミが出たら家賃は減額される?

トコジラミが出たというだけで、自動的に家賃が下がるわけではありません。

民法611条では、借主の責任ではない理由によって賃借物の一部が使用・収益できなくなった場合、その割合に応じて賃料が減額される規定があります。

ただし、トコジラミ発生によってどの程度住宅を使用できなくなったのか、原因が誰にあるのか、駆除期間はどの程度かなど、個別事情によって判断が変わります。

自分の判断で家賃の支払いを止めるのではなく、貸主・管理会社と協議し、必要なら住宅相談・法律相談を利用してください。

引っ越し費用やホテル代も大家へ請求できる?

これも自動的に請求できるものではありません。

一時退去が本当に必要だったか、トコジラミ発生の原因、貸主側の対応状況、契約内容、損害との因果関係などが問題になります。

ホテルや引っ越しを先に自己判断で契約してから全額請求するのではなく、可能な場合は事前に管理会社・大家と対応を協議してください。

大家・管理会社側が確認したいこと

入居者からトコジラミ発生の申告を受けた場合も、最初から「入居者が持ち込んだ」と断定するのは避けた方がよいでしょう。

確認したいのは、

  • 虫体が本当にトコジラミか
  • いつから発生しているか
  • 自室だけか
  • 隣室・上下階に発生していないか
  • 共用部に痕跡がないか
  • 入居時期
  • 旅行・中古家具等の持ち込み状況
  • 過去の入居者から相談がなかったか

です。

集合住宅で複数室へ拡散している場合、自室だけを駆除しても再発する可能性があるため、建物単位での調整が必要になる場合があります。

費用負担でもめた場合の相談先

貸主・借主間で解決できない場合は、第三者の相談窓口を利用します。

東京都では、賃貸住宅の修繕や原状回復について「賃貸ホットライン」などの相談窓口を設けています。

全国では、自治体の住宅相談窓口、消費生活センター、法テラス、弁護士等への相談も検討できます。

また、害虫駆除業者との料金トラブルであれば、消費者ホットライン188へ相談できます。

国民生活センターは、インターネット上の極端な格安料金を見て害虫駆除を依頼し、作業後に高額料金を請求されるトラブルについて注意喚起しています。

よくある質問

賃貸でトコジラミが出たら大家負担ですか?

必ず大家負担ではありません。入居前から発生していたのか、入居者が荷物等で持ち込んだのか、隣室等から広がったのか、原因が分からないのかによって判断が変わります。

入居者がトコジラミを持ち込んだ場合は自分で払いますか?

持ち込みが明確で、入居者側の責任による発生と判断される場合は、入居者負担となる可能性が高くなります。ただし具体的には契約内容と事実関係を確認します。

入居してすぐトコジラミが出ました

入居前から生息していた可能性も含めて管理会社へ連絡してください。虫体・血糞・発見場所を撮影し、家具などを別室へ移さずに調査してもらうとよいでしょう。

管理会社に連絡する前に業者を呼んでもいいですか?

緊急の調査は必要な場合がありますが、高額な施工を契約する前に管理会社・大家へ連絡する方が安全です。事前合意なく施工した費用を後から全額請求できるとは限りません。

契約書に「害虫駆除は借主負担」とあります

契約内容は重要ですが、条項の内容、発生原因、契約時の説明なども確認します。通常以上の負担を借主に課す特約については、合理性や借主の認識等が問題となる場合があります。

隣の部屋からトコジラミが来た場合も自分が払いますか?

隣室からの拡散が確認できる場合は、自室の入居者だけの問題として扱うのが適切とは限りません。管理会社へ建物全体の発生状況を調査してもらい、費用負担を協議してください。

トコジラミが出たら家賃を払わなくてもいいですか?

自己判断で家賃の支払いを止めるのは避けてください。使用できない部分が生じた場合の賃料減額について民法611条がありますが、トコジラミのケースにどのように適用されるかは原因・被害範囲等によって異なります。

退去すればトコジラミ問題は終わりますか?

トコジラミが付着した衣類・家具・段ボール等をそのまま新居へ運ぶと、新居へ持ち込む可能性があります。退去・引っ越しをする場合も、移動前に専門業者と荷物の処理方法を確認してください。

まとめ

賃貸住宅のトコジラミ駆除費は、「大家」「入居者」のどちらかに最初から決まっているわけではありません。

  • 貸主には住宅使用に必要な修繕義務がある
  • 借主の責任で必要になった修繕等は借主側の負担になる場合がある
  • トコジラミは荷物・衣類・家具等から持ち込まれる
  • 集合住宅では物や建物内の隙間を介して広がる場合もある
  • 入居直後・複数室発生なら建物側も含めて調査する
  • 発見後はできるだけ早く管理会社・大家へ連絡する
  • 家具・寝具をむやみに別室へ移動しない
  • 契約書・特約だけでなく発生原因も確認する
  • 調査報告書と内訳付き見積書を残す
  • 施工前に誰が何を負担するか確認する

特にトコジラミは、発生源が分からないまま自室だけを施工しても再発することがあります。

「誰が払うか」を先に争うより、まず発生状況を記録し、拡散を防ぎ、管理会社・大家と発生範囲を確認したうえで費用負担を整理することが重要です。

被害の痕跡を確認する場合は症状・痕跡、害虫対策全体は害虫、駆除費用を比較する場合は費用・相場、依頼先を選ぶ場合は業者選びを参考にしてください。

参考にした公的・公式情報

※駆除費・修繕費・退去費用の法的負担は、発生原因、契約条項、建物の状況、当事者の対応等によって異なります。個別の紛争については住宅相談窓口・消費生活センター・法律専門家等へご相談ください。確認日:2026年9月20日。

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この記事を書いた人

住宅で発生する害獣・害虫トラブルについて、公的機関・自治体・専門団体・学術情報などを確認しながら情報を整理しています。症状から原因を考え、安全な対処や専門業者へ相談する判断材料を提供することを目的としています。

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