コンセントに挿したり天井裏へ置いたりするだけで、ネズミを追い出せるとうたう超音波式の機器があります。
薬剤や罠を使わずに済むため魅力的に見えますが、研究結果を確認すると、ネズミが最初に反応することはあっても、その効果が長期間続き、すでに住み着いたネズミを超音波だけで建物から排除できるとは考えにくいというのが実態です。
日本でクマネズミとドブネズミを使って行われた試験では、超音波装置を作動させた直後には摂食などに変化が見られましたが、3〜4日後には処理前に近い状態へ戻りました。
超音波を試すこと自体よりも、「超音波を付けたから、しばらく何もしなくてもよい」と判断してしまうことに注意が必要です。
ネズミ用超音波は「最初に反応しても効果が続かない」ことがある
ネズミが超音波を感知できることと、家庭用の超音波機器だけでネズミ被害を解決できることは別の話です。
2004年に日本家屋害虫学会誌へ掲載された「クマネズミとドブネズミに対する超音波防鼠器の効力試験」では、20kHz±3kHzの自動可変音と衝撃波を発する装置を用いています。
試験では、装置を作動させた初日は摂食量などに変化が見られました。
しかし、3〜4日後にはネズミの行動と摂食状況が、装置を使う前とほぼ同じ状態へ戻っています。
さらにクマネズミを30日間継続して超音波へ曝露した試験では、異常行動は確認されず、体重も増加し、雌1匹では妊娠も確認されました。
研究者は、超音波防鼠器がクマネズミ・ドブネズミに一定の影響を与えるものの、その影響は一過性で持続期間が短いと結論づけています。
海外の試験でも「最初だけ反応して慣れる」結果がある
ドブネズミを対象にした1977年の実験では、複数の市販超音波装置の出力を測定したうえで、広い周波数帯を出す装置と、狭い周波数帯を出す装置を比較しています。
広帯域型では、ネズミの活動量に測定可能な減少が確認されませんでした。
狭帯域型では当初、装置のある部屋で摂食行動が低下しましたが、約1週間後には再び摂食活動が増え、超音波への馴化が示されています。
つまり、
- 最初は場所を避ける
- 足音が一時的に減る
- 餌場から離れる
といった変化があったとしても、それだけで「ネズミが家からいなくなった」とは判断できません。
周波数が自動で変わる機器なら慣れないのか
市販製品では「周波数を自動的に変えるためネズミが慣れにくい」と説明されることがあります。
しかし、先ほどの日本の試験で使われた装置自体が、20kHz±3kHzの範囲で周波数を自動的に変化させ、さらに衝撃波も加えるタイプでした。
それでも3〜4日後には行動・摂食状況が処理前に近づいています。
そのため、
「固定周波数は慣れるが、自動変周波タイプなら長期間効き続ける」
とは言い切れません。
周波数を変える機能の有無だけで、家庭内のネズミ問題を解決できる製品かどうかを判断しない方がよいでしょう。
20kHzなら効果があるのか
環境省関東地方環境事務所がまとめた外来ネズミ類対策の勉強会資料では、ネズミについて20kHz前後で音圧が高いほど影響が出る一方、落ち葉などの遮蔽物を通過せず、効果が出ない可能性もあると整理されています。
また、すでに侵入したネズミを、侵入防止程度の超音波装置だけで排除することは難しいともされています。
これは小笠原の外来ネズミ対策を検討した資料であり、一般住宅用製品の性能試験そのものではありません。
したがって「20kHzなら家庭でも確実に効く」という意味ではありません。
周波数だけでなく、
- 音圧
- ネズミまでの距離
- 障害物
- 部屋や天井裏の構造
- ネズミがすでに定着しているか
によって条件は大きく変わります。
超音波は壁や家具の向こうまで均一には届かない
超音波も音です。
UC IPM(カリフォルニア大学の総合的害虫管理プログラム)は、超音波式のネズミ対策について、音に指向性があり、障害物の背後へ届きにくく、距離とともに強度が低下することを問題点として挙げています。
住宅では、ネズミがいる場所と超音波機器との間に、
- 壁
- 天井材
- 梁
- 断熱材
- 家具
- 収納物
- 屋根裏の区画
などが存在します。
そのため、リビングのコンセントに超音波機器を挿したからといって、壁内や2階の天井裏まで同じ強度の超音波が届くとは考えない方がよいでしょう。
天井裏のネズミには超音波が効きやすいのか
天井裏は生活空間より狭いため、「超音波を置けば効きやすいのでは」と考えることがあります。
しかし、天井裏にも梁、断熱材、配線、ダクト、間仕切りなどがあります。
さらにクマネズミは、壁内・天井裏・配管周辺などを立体的に移動します。
超音波を置いた部分を避けても、同じ住宅の別の区画へ移動するだけということも考えられます。
設置後に真上の足音が止まっても、
- 別の部屋で音が始まった
- 新しい糞がある
- 食品がかじられる
- 壁際の黒い擦れ跡が増える
のであれば、被害が解決したとは判断できません。
天井裏の音そのものを確認したい場合は、症状・痕跡から原因を探すページも参考にしてください。
「音がしなくなった」は効果判定として十分ではない
超音波を置いた翌日から天井の音がしなくなると、「効いた」と感じるのは自然です。
ただし、ネズミは毎晩同じ場所を同じ時間に通るわけではありません。
また、装置のある場所を一時的に避けて別の場所へ移動している可能性もあります。
超音波の効果を確認するなら、足音だけではなく、次の変化を見ます。
| 確認するもの | 見るポイント |
|---|---|
| 糞 | 新しい糞が増えていないか |
| かじり跡 | 食品袋・木材・配線などに新しい跡がないか |
| ラットサイン | 壁際・配管周辺の黒い擦れ跡が増えていないか |
| 食品被害 | 食べ物や生ごみを荒らされていないか |
| 物音 | 別室・壁内・床下へ移っていないか |
「3日間静かだった」というだけで、侵入個体がすべて外へ出たとは確認できません。
超音波を何週間も試してから別の対策を考える必要はない
通販の商品説明では、「数週間使うと効果が出る」といった表示を見かけることがあります。
一方、研究では数日程度で馴化した例があります。
新しい糞やかじり跡が続いているにもかかわらず、超音波だけを付けて何週間も待つ必要はありません。
被害のサインが継続していれば、超音波の追加購入より、餌・巣材・侵入口などを確認する方が重要です。
「超音波+電磁波」なら効果が高くなるのか
超音波に加えて、「家庭の配線へ電磁的な信号を送り、壁内のネズミにも作用する」とする製品もあります。
この種の表示については、過去に日本と米国の行政機関が問題視した事例があります。
日本では2002年、公正取引委員会が、超音波・電磁波によってゴキブリやネズミを家屋から追い出すとした特定商品の表示について、実用的な駆除効果があるとは認められないとして排除命令を出しています。
現在の消費者庁も、不実証広告規制を説明する具体例として、超音波や電磁波によってゴキブリ・ネズミを家から追い出すと表示したものの、実際には駆除効果が認められず、根拠データも存在しなかった例を掲載しています。
これは「現在販売されているすべての超音波機器に効果がない」と行政機関が認定しているという意味ではありません。
一方で、「超音波」「電磁波」という仕組みの説明だけでは、製品の実際の駆除効果の証明にはならないことは押さえておく必要があります。
米国でも超音波駆除器の広告表示が問題になっている
米国連邦取引委員会(FTC)は、超音波式害虫駆除機器について、ネズミ等を排除できるという広告には信頼できる科学的根拠が必要だとメーカー・販売者へ警告しています。
FTCが過去に問題視した主張には、
- ネズミ被害をなくす
- 従来の害虫・害獣対策の代わりになる
- 一定面積からネズミを排除できる
などがあります。
FTCは、従来の案件で、ネズミの反応があったとしても一時的で、超音波に慣れて営巣・餌場へ戻る可能性が指摘されていたことも説明しています。
口コミで「効いた」という人がいるのはなぜか
超音波機器の口コミには、「設置した日から足音が消えた」という評価と、「何週間使っても変わらなかった」という評価の両方があります。
個人の体験が虚偽という意味ではありません。
超音波に一時的に反応した個体がいる可能性もあります。
ただし、家庭での口コミでは、
- 同時に侵入口を塞いだ
- 餌を片づけた
- 罠も設置した
- 季節的に活動場所が変わった
- たまたま別の場所へ移動した
といった条件を分離できません。
「超音波を付けた後にネズミを見なくなった」ことと、「超音波だけが原因でネズミが住宅から完全に排除された」ことは同じではありません。
すでに超音波機器を買った場合はどうする?
すでに持っている場合、すぐ捨てる必要があるという話ではありません。
製品表示どおりに使用しつつ、超音波を補助的な対策と位置づけます。
そのうえで、
- 新しい糞・かじり跡・物音を記録する
- 食品や生ごみを片づける
- 巣材になる紙・布・段ボールを減らす
- 侵入口候補を確認する
- 必要に応じて罠など別の対策を組み合わせる
- 被害が続けば専門調査へ切り替える
という順番で進めます。
「超音波を使っているから侵入口は塞がなくてよい」という状態にはしないでください。
ネズミ対策で優先したいのは餌・巣・侵入口
中野区は家庭のネズミ対策として、超音波ではなく、次の3つの環境対策を重視しています。
餌になるものを片づける
- 食品を密閉容器に入れる
- 生ごみを放置しない
- ペットフードを出したままにしない
- 仏壇のお供えなども夜間は片づける
巣材を減らす
紙、布、ビニール、段ボールなどは巣材として使われることがあります。
押入れ、収納、冷蔵庫や家具の裏などを整理します。
侵入口を塞ぐ
中野区は、ネズミが1cm程度の隙間からも出入りできるとして、外壁・通風口・配管貫通部・戸袋・基礎・換気扇・押入れ等の点検を勧めています。
住宅のどこから入っているか確認したい場合は、住宅の場所から害獣・害虫を探すページも参考になります。
大きな穴や高所、屋根周辺、構造を壊さないと確認できない場所は、自分で無理に塞がず専門業者へ相談します。
罠や殺鼠剤を使う場合も超音波だけより状況を確認しやすい
中野区は、環境対策を行ったうえで、粘着シート、かごわな、殺鼠剤などを組み合わせる方法を案内しています。
使用する場合は製品表示を守り、子ども・ペットが触れないようにしてください。
殺鼠剤では、建物内部の見えない場所でネズミが死に、臭いの原因になる場合もあります。
どの方法が適しているかは、ネズミの種類、生息場所、子ども・ペットの有無、侵入口、被害規模によって変わります。
ペットがいる家では製品表示を必ず確認する
「人間には聞こえない超音波だから、すべてのペットにも影響がない」とは一律に考えない方がよいでしょう。
製品によって出力周波数や音圧、対象動物が異なります。
特にハムスターなどのげっ歯類を飼育している場合は、使用を避けるよう注意表示されている製品もあります。
犬・猫を含め、ペットがいる住宅では購入・使用前にその製品の説明書とメーカー情報を確認してください。
超音波だけで様子を見ず、調査へ切り替えたい状態
次の状態が続いている場合は、超音波機器を追加するより原因調査を優先します。
- 毎日のように新しい糞が出る
- 天井裏や壁内の物音が続く
- 食品を繰り返しかじられる
- 電線・電気設備付近にかじり跡がある
- 焦げ臭い・ブレーカー異常がある
- 複数の部屋で痕跡がある
- 侵入口が分からない
- 高所や屋根周辺から侵入している
- 対策後も新しいラットサインが増える
電線周辺のかじり跡、焦げ臭さ、煙、ブレーカー異常がある場合は、害獣対策より先に電気設備の安全確認が必要です。
専門業者への依頼を検討するときは、超音波装置の設置だけではなく、侵入口調査、捕獲・駆除、封鎖、清掃、再発時の対応まで見積もりに含まれるか確認してください。
料金については害獣・害虫駆除の費用・相場、依頼先を比べる場合は害獣・害虫駆除業者の選び方も参考にしてください。
超音波機器の効果をどう考えればよいか
| 疑問 | 考え方 |
|---|---|
| ネズミは超音波を感じる? | 感じる。人工超音波への行動反応も研究されている |
| 最初は効く? | 一時的な行動変化が出る場合がある |
| ずっと効く? | 数日〜1週間程度で馴化した試験がある |
| 周波数可変なら大丈夫? | 自動可変型でも効果が短期だった日本の試験がある |
| 壁の中まで届く? | 超音波は障害物の影響を受け、壁や家具の背後へ均一には届かない |
| 超音波だけで駆除できる? | 既に定着したネズミの根本対策としては期待しにくい |
| 使う意味はない? | 一時的な補助手段として使う余地はあるが、他対策を遅らせない |
よくある質問
ネズミの超音波は本当に効果がありますか?
ネズミが超音波に反応すること自体は確認されています。ただし、日本のクマネズミ・ドブネズミの試験では、初期反応の後、3〜4日ほどで処理前に近い行動へ戻っています。家庭のネズミを長期間排除する方法として、超音波だけに頼るのは勧めにくいです。
ネズミは何日で超音波に慣れますか?
すべての個体に共通する日数はありません。日本の試験では3〜4日、海外のドブネズミ試験では約1週間後に馴化を示す変化が確認されています。製品や住宅環境によって同じ結果になるとは限りませんが、数日で影響が弱くなる可能性はあります。
周波数が変化するタイプなら効果は続きますか?
保証できません。日本の研究で使われた装置も周波数が自動変化するタイプでしたが、影響は短期間でした。「自動変周波だから慣れない」とは判断しない方がよいでしょう。
20kHzが一番効くのですか?
環境省の外来ネズミ対策の検討資料では、20kHz前後・高音圧で影響があるとの整理がありますが、遮蔽物の影響も指摘されています。一般住宅で20kHzを出せば必ず駆除できるという意味ではありません。
天井裏に置けば効果がありますか?
ネズミのいる場所へ音が届けば反応する可能性はあります。しかし梁・断熱材・壁などで遮られ、別区画へ移動する場合があります。音が止まっただけで退出したとは判断せず、糞・かじり跡・ラットサインも確認してください。
超音波と電磁波の両方が出る製品なら効きますか?
機能が多いことだけでは、実際の駆除効果を証明できません。日本では過去に、超音波・電磁波によるネズミ駆除効果をうたった特定商品の表示について、実用的な効果が認められないとして行政処分が行われています。
超音波で音がしなくなったらネズミはいなくなっていますか?
そうとは限りません。別の場所へ移った、一時的に活動時間が変わった可能性もあります。新しい糞、食品被害、かじり跡、壁際の擦れ跡などがなくなったかも確認してください。
超音波を試すなら何週間待てばよいですか?
新しい被害サインが続いているなら、何週間も超音波だけで待つ必要はありません。研究では数日で慣れた例もあります。餌・巣材・侵入口の対策や、必要に応じて罠などへ進みます。
ペットがいても使えますか?
製品ごとに確認してください。人には聞こえない周波数でも、別の動物には感知できる場合があります。特にげっ歯類のペットがいる場合は使用制限のある製品もあるため、説明書とメーカー情報を確認します。
