庭や屋根の上で細長い茶色の動物を見かけたとき、イタチなのかテンなのか迷うことがあります。
どちらもイタチ科で、胴が細長く脚が短いため、夜間に一瞬見ただけでは区別しにくい動物です。
見分けるときは、毛色だけではなく、体格、耳の目立ち方、顔、季節による毛色変化、足跡、糞を組み合わせます。
また、「イタチ」と呼ばれている動物が必ずニホンイタチとは限りません。西日本の市街地などではシベリアイタチが多い地域もあるため、ニホンイタチの大きさだけを基準にテンと区別すると間違うことがあります。
イタチとテンの違いを比較
| 確認項目 | イタチ | テン |
|---|---|---|
| 分類 | イタチ科イタチ属 | イタチ科テン属 |
| 体格 | 一般にテンより小型。ただし種類・雌雄差が大きい | イタチより大型 |
| 耳 | 小さく見えやすい | 耳介が比較的はっきり外へ出て見える |
| 毛色 | 茶色〜山吹色・黄褐色系。種類や季節で変化 | 黄色〜黄褐色・黒褐色まで個体差が大きい |
| 顔 | ニホンイタチは額〜鼻に濃色部、口〜首に白い部分が目立つことがある | 夏冬で顔色が大きく変わる個体がいる |
| 尾 | ニホンイタチでは頭胴長の半分以下。ただしシベリアイタチでは長い | ホンドテンの公的参考値では頭胴長45cm、尾19cm |
| 足跡 | 5本指。ニホンイタチは2〜3cmが参考値 | 5本指。爪跡が明瞭で、前足のパッド形状なども判断材料 |
| 糞 | 細長い糞。動物質の内容物を含むことがある | 細長い。食べ物によって形・色・内容物が変わる |
姿を確認できた場合は、まず体格と耳を見ると候補を絞りやすくなります。
足跡や糞しかない場合は、一つの痕跡だけで決めず複数の情報を照合してください。
テンはイタチより大型
見た目で比較するときに使いやすいのが体格です。
国立環境研究所では、ホンドテンの頭胴長を約45cm、尾長を約19cm、体重を1.1〜1.5kgとしています。
福岡市動物園でもホンドテンを体長41〜49cm、体重0.9〜1.6kgとし、「イタチによく似ているが、テンの方が大型」と説明しています。
一方、国立環境研究所によるニホンイタチの頭胴長は、
- 雄:27〜37cm
- 雌:16〜25cm
で、雄と雌の体格差がかなり大きい動物です。
この数値だけを見ると、テンの方が明らかに大きく見えます。
「大きなイタチ=テン」とは限らない
住宅地での識別では、もう一つ注意したい動物があります。
シベリアイタチです。
大阪府は、町で見かけるイタチにはシベリアイタチが多いと案内しています。
国立環境研究所では、シベリアイタチの雄を頭胴長28〜39cm、尾長16〜21cm、体重650〜820g程度としています。
ニホンイタチより大型で尾も長いため、
「ニホンイタチより大きいからテン」
という一項目だけでの判定は避けます。
耳がはっきり見えるならテンを考える材料になる
体格とあわせて確認しやすいのが耳です。
国立環境研究所は、ホンドテンについて「耳介がはっきりと外に出る」ことを、ほかのイタチ類と区別する特徴の一つに挙げています。
福岡市動物園も、テンはイタチより大型で、耳介がはっきり外へ出ていることで区別できると説明しています。
写真や防犯カメラ映像で、
- 頭に対して耳がはっきり目立つ
- 体格も比較的大きい
- 顔・毛色がテンらしい
という特徴が重なる場合は、テンを考える材料になります。
ただし、夜間映像では耳が伏せて見えたり、撮影角度によって見えない場合があります。
テンは夏と冬で見た目が大きく変わることがある
イタチとテンを色で見分ける場合に注意したいのが、テンの毛色です。
福岡市動物園では、飼育しているホンドテンについて、夏毛では顔が黒くなり、冬毛では顔全体が白くなると説明しています。
愛知県も、テンについて夏は褐色で、冬は黄色に変わる個体がいると案内しています。
そのため、同じテンでも夏と冬でかなり違う動物に見えることがあります。
黄色いからテンとは限らない
一方、国立環境研究所は、ホンドテンの毛色について、鮮やかな黄色をした個体から黒褐色の個体まで変異が大きいとしています。
冬でも暗色のままに見える「スステン」と呼ばれるタイプもあります。
ニホンイタチも山吹色を呈するため、
「黄色い=テン」「茶色い=イタチ」
という色だけの判断は適切ではありません。
体格、耳、顔、尾なども合わせます。
ニホンイタチの顔にも特徴がある
国立環境研究所では、ニホンイタチを全身山吹色とし、額中央部から鼻にかけて濃褐色の斑紋があると説明しています。
愛知県の資料では、全身は茶色から山吹色で、口の周辺から首にかけて白い部分が目立つとされています。
ただし、住宅地ではシベリアイタチの可能性もあります。
シベリアイタチでは、目から鼻周辺に濃褐色の斑紋があり、鼻周辺から口・喉が白いとされています。
そのため、「口元が白い」という一点だけではニホンイタチとテンの二択を確定できません。
尾の長さだけで見分けるのは難しい
ニホンイタチについて、国立環境研究所は成獣の尾長が頭胴長の50%を超えないとしています。
一方、シベリアイタチでは尾長と頭胴長の比率が50%以上になるとされています。
つまり、
- 尾が短いイタチ
- 尾が比較的長いイタチ
の両方が日本の住宅周辺で候補になります。
ホンドテンの公的参考値は頭胴長約45cmに対して尾長約19cmです。
尾は見分ける材料にはなりますが、尾の長さだけでテンとイタチを決めない方がよいでしょう。
足跡は両方とも5本指
足跡で注意したいのは、イタチもテンも5本指という点です。
ニホンイタチは2〜3cmが公的な参考値
愛知県のグリーンデータブックでは、ニホンイタチの足跡について、前後足はほぼ同じ形で、
- 長さ2〜3cm
- 幅1.5〜3cm
- 5本の指跡
- 5本の爪跡
が残るとしています。
ただし、この大きさはニホンイタチについての資料です。
シベリアイタチはより大型になるため、「3cmを超えたからイタチではない」とは判断しません。
テンも5本指と爪跡が残る
農林水産省の中型獣類資料では、テンの足跡について、
- 5本指
- 前足のパッドは三日月型
- 後足では踵側の丸いパッドが写ることがある
- 爪跡が明瞭
としています。
したがって、
「5本指だったからイタチ」
とも、
「爪跡があったからテン」
とも判断できません。
足跡は大きさ、肉球の形、周囲の別の足跡、全身写真などと合わせて確認します。
足跡は定規と一緒に撮影する
庭、泥、ほこりのある場所などで足跡を見つけた場合は、触る前に定規などを横へ置いて撮影します。
- 全長
- 幅
- 指の数
- 爪跡
- 肉球の形
- 前後へ続く足跡
を記録してください。
一つの不鮮明な足跡だけではなく、複数の足跡を確認できると判断材料が増えます。
動物の足跡を横断的に確認したい場合は、症状・痕跡から害獣・害虫を探すページも参考にしてください。
糞でも比較できるが、糞だけで確定しない
イタチもテンも食べたものによって糞の形・色・内容物が変化します。
福岡市動物園では、ホンドテンの糞を5cm程度の細長い形とし、食べ物によって色が異なるとしています。
テンは小動物だけでなく果物なども食べる雑食性です。
農林水産省の獣種識別資料でも、テンの糞は識別対象に含まれていますが、糞の色や形状は時期・食物によって変わり、フローチャートがすべての条件に当てはまるものではないと注意しています。
イタチの糞も細長く、動物質を多く食べた場合には毛・骨・昆虫片などが含まれることがあります。
一般にはテンの方が大型なため糞も太く見える場合がありますが、個体差・食物・乾燥状態があるため、大きさだけで確定しません。
糞を触って確認する必要はない
種類を見分けるために、糞を素手で触ったり、割ったり、直接臭いを嗅いだりしないでください。
確認するなら、
- 定規を添えた写真
- 発見場所
- 本数
- 一か所へ繰り返したまっているか
- 目視できる種子・毛など
を記録します。
屋根裏の足音だけでイタチとテンは見分けにくい
夜の天井裏から走る音がすると、「重ければテン、軽ければイタチ」と考えたくなります。
テンの方が平均的には大型ですが、音は、
- 建物の構造
- 天井材
- 断熱材
- 動物が走る位置
- 個体数
で大きく変化します。
また、シベリアイタチのように比較的大型のイタチもいます。
そのため音量だけで二択を決めず、写真、糞、足跡なども合わせます。
「家で見たイタチ」がニホンイタチとは限らない
イタチとテンを比較するうえで見落としやすいのが、イタチ側にも複数の候補があることです。
国立環境研究所によると、ニホンイタチは本州・四国・九州などに自然分布しています。
一方、シベリアイタチは国外由来で、西日本を中心に広く分布しています。
大阪府も、町で見かけるイタチにはシベリアイタチが多いと案内しています。
そのため住宅地では、
ニホンイタチ vs テン
だけでなく、
シベリアイタチ vs テン
という可能性も残しておく必要があります。
地域だけでイタチとテンを決めることもできない
ホンドテンは本州・四国・九州に分布します。
ニホンイタチも本州・四国・九州などに自然分布しているため、広い範囲で分布が重なります。
「この県ならテンはいない」「山の近くだから必ずテン」といった単純な判定はできません。
ただし、市街地でシベリアイタチの記録が多い地域など、地域情報は候補の優先順位を考える補助にはなります。
安全に見分ける順番
- 全身写真・動画があれば体格を見る
テンは一般にイタチより大型です。 - 耳を見る
テンは耳介がはっきり目立つことが識別材料になります。 - 顔と毛色を見る
テンは季節で顔・毛色が大きく変わる個体があります。ただし暗色個体もいるため色だけでは決めません。 - 足跡を測る
両方5本指。ニホンイタチの2〜3cmという値は参考に留めます。 - 糞を写真で記録する
大きさ・内容物・場所を確認しますが、触って分解しません。 - 屋根裏の音・侵入痕跡を照合する
音だけでは種類を確定しません。
イタチでもテンでもない可能性も残す
写真や痕跡が不鮮明な場合は、イタチとテンの二択に無理に絞る必要はありません。
住宅周辺には、ハクビシン、アライグマ、ネズミ類なども侵入します。
特に、
- 顔が写っていない
- 大きさを比較できない
- 糞だけしかない
- 足跡が一つしかない
- 音しか聞いていない
場合は、別の動物も候補に残します。
複数種を広く比較するときは、住宅の害獣対策や症状・痕跡から探すページから候補を確認してください。
種類が分からない状態で捕獲しない
イタチとテンはどちらも野生鳥獣です。
環境省の現在の狩猟鳥獣一覧では、テンはツシマテンを除いて狩猟鳥獣、ニホンイタチは雄のみが狩猟鳥獣です。シベリアイタチについても対象地域等の規定があります。
ただし、これは住宅に入った個体を誰でも自由に捕まえてよいという意味ではありません。
狩猟には、
- 狩猟免許
- 狩猟者登録
- 狩猟期間
- 区域
- 使用できる猟法
などの条件があります。
また、被害防止目的の捕獲には自治体の捕獲許可制度等を確認する必要があります。
特にイタチは種や性別によって扱いが異なるため、遠目の見た目だけで「捕獲してよい種類」と自己判断しないでください。
正体不明のまま侵入口を全部塞がない
屋根裏などへの出入り穴を発見しても、中に動物や幼獣が残っている可能性がある状態で完全に封鎖するのは避けます。
先に、
- どの動物か
- どこから出入りしているか
- 複数個体がいないか
- 内部に残っていないか
を確認します。
屋根・2階以上の高所、狭い天井裏などを自分で確認する必要はありません。
侵入場所を住宅部位から確認したい場合は、住宅の場所から害獣・害虫を探すページも参考になります。
専門調査を検討したい状態
- 写真を撮ってもイタチ・テンの区別がつかない
- 毎晩屋根裏の物音が続く
- 大量の糞尿がある
- 天井や断熱材まで汚れている
- 高所から出入りしている
- 侵入口を特定できない
- 親子・複数個体の可能性がある
- 捕獲が必要になっている
依頼するときは、単に「イタチ駆除」と決め打ちするのではなく、現地調査で動物種、侵入口、糞尿汚染、個体の在不在を確認できるかを聞きます。
費用を見る場合は害獣・害虫駆除の費用・相場、依頼先を比べる場合は害獣・害虫駆除業者の選び方も参考にしてください。
よくある質問
イタチとテンの一番分かりやすい違いは何ですか?
姿を十分確認できる場合は、体格と耳が有力な比較材料です。福岡市動物園や国立環境研究所は、テンはイタチより大型で耳介が明瞭であることを区別点に挙げています。ただし体格だけではシベリアイタチとの混同があるため、顔や毛色なども確認してください。
黄色い動物ならテンですか?
黄色だけでは判断できません。ホンドテンには黄色い個体がいますが黒褐色の個体もおり、ニホンイタチも山吹色になります。テンでは夏と冬で毛色・顔色が変わる個体がいることも考慮します。
顔が白ければテンですか?
冬毛のホンドテンでは顔全体が白っぽくなる個体がいます。ただしテンには暗色個体もあり、撮影条件でも色は変わって見えます。顔色だけでなく体格・耳なども合わせます。
イタチとテンはどちらも5本指ですか?
はい。どちらも5本指なので、指の数だけでは区別できません。ニホンイタチでは2〜3cmの足跡が参考値として示されていますが、シベリアイタチでは体格が異なるため固定値では判断しません。
足跡が3cmより大きければテンですか?
そうとは限りません。2〜3cmはニホンイタチの公的参考値であり、より大型のシベリアイタチもいます。テンの足跡も地面の状態によって写り方が変わるため、足跡だけで二択を確定しないでください。
糞だけでイタチとテンを見分けられますか?
完全な判別は難しい場合があります。大きさ・内容物は参考になりますが、糞は食べ物や時期で変わります。全身写真、足跡、周囲の痕跡も合わせてください。
屋根裏の足音が大きければテンですか?
テンは一般にイタチより大型ですが、建物構造や断熱材、走る位置で音は変わります。シベリアイタチも比較的大型なので、足音だけでの判別は避けてください。
イタチかテンか分かったら自分で捕獲できますか?
種類が分かっただけでは自由に捕獲できることにはなりません。狩猟鳥獣の指定は種・性別等で異なり、狩猟には免許・登録・期間・区域・猟法の条件があります。住宅被害で捕獲する場合も自治体へ制度を確認してください。
参考情報
- 国立環境研究所「ニホンイタチ」
- 国立環境研究所「ホンドテン」
- 国立環境研究所「シベリアイタチ」
- 福岡市動物園「ホンドテン」
- 愛知県「グリーンデータブックあいち2018 ニホンイタチ」
- 愛知県「海上の森自然観察インフォメーション ほ乳類」
- 農林水産省「野生鳥獣被害防止マニュアル 中型獣類等」
- 大阪府「イタチでお困りの方へ」
- 環境省「狩猟制度の概要」
