賃貸マンションやアパート、借家の天井裏から大きな足音がする。天井にシミができ、強い臭いもする。
ハクビシンの侵入が疑われる場合、「自分で業者を呼べばよいのか」「駆除費用は大家が払うのか」「自治体へ相談できるのか」と迷うことがあります。
賃貸住宅では、入居者だけの判断で捕獲・侵入口封鎖・屋根や外壁の工事を進めないことが重要です。
ハクビシンを疑ったら、被害状況を記録して管理会社または大家へ速やかに連絡し、誰が調査・業者手配を行うのか、費用をどう分けるのかを確認します。
特にハクビシンは野生鳥獣であり、自己判断で箱わなを設置して捕獲することもできません。
賃貸でハクビシンを疑ったら管理会社・大家へ連絡する
天井裏でハクビシンを疑った場合、最初に行いたいのは駆除業者探しではなく、被害状況の記録と管理会社・大家への連絡です。
安全な室内側から、次の情報を残します。
- 足音が聞こえる時間帯
- 足音がする部屋・天井の位置
- 鳴き声の有無
- 天井のシミ
- 糞尿臭・獣臭
- 室内やベランダで見つけた糞
- 建物外から安全に見える穴・隙間
- 実際に動物を見た場合の写真・動画
屋根へ上ったり、天井裏の奥へ入ったりして証拠を撮る必要はありません。
分かる範囲を管理会社へ伝えれば十分です。
ハクビシンか分からなくても連絡してよい
屋根裏に入る動物はハクビシンだけではありません。
ネズミ、アライグマ、イタチ、コウモリなどでも物音や糞尿被害が起こります。
そのため、管理会社へ連絡するときは「ハクビシンです」と断定する必要はありません。
たとえば、
- 夜になると天井裏からドタドタ音がする
- 天井に尿のようなシミができた
- 強い臭いがする
- 屋根の近くでハクビシンらしい動物を見た
と、確認できた事実を伝えます。
賃貸のハクビシン駆除費用は誰が払う?
費用負担を、害獣の種類だけで決めることはできません。
確認したいのは、被害の原因と工事内容です。
| 状況 | 確認の中心 |
|---|---|
| 屋根・外壁・軒天など建物側の隙間から侵入 | 貸主側の修繕対象になるか確認 |
| 共用部分・外装に侵入口がある | 管理会社・所有者による対応を確認 |
| 既存設備の破損が侵入原因 | 設備修繕と害獣対策を分けて確認 |
| 入居者の故意・過失が原因と判断される | 借主負担となる範囲を契約と事実関係から確認 |
| 原因がまだ分からない | 現地調査後に費用負担を決める |
「ハクビシンだから大家負担」と最初から決めるのではなく、侵入原因・契約内容・修繕箇所を確認して判断します。
民法では貸主に必要な修繕義務がある
民法606条では、賃貸人は賃貸物を使用・収益するために必要な修繕を行う義務を負うとされています。
ただし、借主の責めに帰すべき理由によって修繕が必要になった場合は例外です。
国土交通省の賃貸住宅標準契約書も、住宅を使用するために必要な修繕は原則貸主が行い、借主の故意・過失によって必要になった修繕費は借主負担とするモデルになっています。
ただし、ハクビシンの捕獲・追い出し費、糞尿清掃費、消毒費、侵入口修繕費がすべて同じ扱いになるとは限りません。
作業項目を分けて確認することが重要です。
借主には不具合を知らせることも重要
民法615条では、借りている物件が修繕を必要とする状態になった場合、借主は遅滞なく貸主へ通知することとされています。
ハクビシンを疑った段階で連絡する意味はここにもあります。
たとえば、最初は小さな尿シミだったものを長期間放置し、断熱材・天井材まで広く汚損した場合には、「いつ発見し、いつ通知したか」が費用トラブルで問題になる可能性があります。
電話だけでなく、管理アプリやメールなど記録が残る方法でも伝えておくとよいでしょう。
入居者が勝手に高額な駆除業者を呼ばない方がよい
ハクビシン駆除では、
- 現地調査
- 追い出し
- 捕獲
- 糞尿清掃
- 消毒
- 汚染断熱材の撤去
- 侵入口封鎖
- 屋根・外壁補修
などが必要になることがあり、施工範囲によっては費用が大きくなります。
入居者が管理会社へ知らせずに数十万円規模の契約を結び、施工後に大家へ請求しても、全額負担してもらえるとは限りません。
まず、
- 管理会社・大家へ連絡
- 誰が調査業者を手配するか確認
- 現地調査
- 原因・被害範囲を確認
- 誰が何を負担するか確認
- 施工
という順に進めます。
駆除費・清掃費・修理費を分けて確認する
「ハクビシン対策一式」とだけ書かれた見積では、費用負担を判断しにくくなります。
できれば、
- 調査費
- 追い出し費
- 捕獲費
- 糞撤去費
- 消毒・衛生処理費
- 断熱材撤去・交換費
- 侵入口封鎖費
- 軒天・屋根・外壁等の修繕費
- 再発保証
などを分けて確認します。
建物修繕と動物対策を分けることで、貸主・借主のどちらが負担するかも整理しやすくなります。
建物側の侵入口なら管理会社へ修繕も相談する
ハクビシンは、
- 屋根の重なり
- 軒天の破損
- 換気口
- 外壁の穴
- 増築部分の接合部
- 床下通気口
などから住宅内へ入り込むことがあります。
こうした建物部分は入居者が自由に工事できる場所ではありません。
たとえ侵入口を自分で見つけても、管理会社の承諾なしに金網を固定したり、コーキングしたり、屋根・外壁へ穴を開けたりしないでください。
追い出した直後に穴を塞ぐのも危険
侵入口が分かっても、ハクビシンがまだ天井裏にいる状態で全面封鎖すると、建物内部へ閉じ込める可能性があります。
幼獣が残っている可能性もあります。
対策は、
- 侵入口と活動状況を確認
- 追い出し等を行う
- 全個体・幼獣の不在を確認
- 侵入口を封鎖
という順に進めます。
賃貸では、この封鎖工事も管理会社・所有者と施工方法を確認してから行います。
ハクビシンを入居者が勝手に捕獲してはいけない
ハクビシンは鳥獣保護管理法の対象となる野生鳥獣です。
東京都も、野生鳥獣は法律上、許可等の例外を除いて捕獲できないと案内しています。
そのため、
- 市販の箱わなを勝手に置く
- 捕まえた個体を自分で移動する
- 捕獲した個体を別の場所へ放す
- 殺傷する
といった対応を自己判断で行わないでください。
捕獲が必要な場合は、管理会社・所有者と相談し、所在地自治体の制度や許可条件を確認します。
追い出すことと捕獲することは分けて考える
住宅からハクビシンを追い出し、侵入口を封鎖して再侵入を防ぐ方法と、箱わななどで捕獲する方法は同じではありません。
捕獲には法令上の確認が必要です。
一方、追い出しでも、賃貸住宅では屋根・外壁・換気口等への施工が伴うため、入居者だけで完結させにくい場合があります。
賃貸でも自治体のハクビシン対策を使える?
自治体によって大きく異なります。
「東京都内だから同じ」「市役所なら無料」と考えないようにしてください。
東京都北区は民間集合住宅も対象
東京都北区では、ハクビシン・アライグマによる具体的な被害がある場合、専門業者による現地調査と箱わな設置を行っています。
対象場所には一般住宅だけでなく、民間集合住宅も含まれます。
ただし、所有者・管理者の同意が必要で、箱わなの毎日の確認や捕獲時の連絡、対応後の侵入口封鎖等も所有・管理者側で行う条件があります。
賃貸入居者だけで申請を完結させる制度ではありません。
町田市ではまず所有者へ相談
町田市の防除事業では、申込者が所有者であるか、所有者から承諾を得ていることが条件です。
賃借人には、まず物件所有者へ相談するよう明記されています。
調査・わな設置・捕獲等が無料でも、消毒や穴ふさぎ等を民間業者へ依頼する費用は別途自己負担となる場合があります。
府中市では賃貸住宅が対象外
府中市は、自己所有かつ現に居住する一戸建てを対象にハクビシン等への支援を行っています。
賃貸住宅は事業対象外と案内されています。
このように、自治体によって、
- 賃貸でも対象
- 所有者の承諾があれば対象
- 集合住宅でも管理者申請なら対象
- 賃貸住宅は対象外
と条件が違います。
自治体が無料でも建物修理まで無料とは限らない
自治体のハクビシン事業で無料になるのは、
- 現地調査
- 箱わな設置
- 捕獲個体の回収・処分
などに限定されているケースがあります。
一方、
- 糞尿清掃
- 消毒
- 断熱材交換
- 天井材修理
- 侵入口封鎖
- 屋根・外壁補修
までは対象外という自治体もあります。
賃貸住宅では、その対象外部分を管理会社・大家と改めて調整します。
糞尿で天井や断熱材が汚れていた場合
ハクビシンは同じ場所へ排泄する「ため糞」をすることがあります。
天井裏に長期間住みついていた場合、糞尿が断熱材へ染み込み、天井にシミや臭いが出ることがあります。
この場合は単に動物を追い出すだけではなく、
- 糞の除去
- 衛生処理
- 汚染断熱材の撤去・交換
- 天井材の状態確認
- 侵入口の修繕
まで必要になる可能性があります。
入居者が自分で断熱材を引き出したり、乾いた糞を掃除機で吸ったりするのは避けてください。
天井にシミができたら写真を残す
天井シミは、ハクビシンの尿だけでなく雨漏り・結露等でも発生します。
原因を決めつけず、
- シミを見つけた日
- 範囲
- 色
- 臭い
- 天井裏の足音との時間的な関係
を記録して管理会社へ伝えます。
被害が広がる前に報告することが重要です。
戸建て賃貸でも大家への連絡は必要
一戸建てを借りている場合、「家全体を借りているから自分で対処してよい」と考えることがあります。
しかし、屋根、外壁、軒天、床下通気口などは建物そのものです。
賃貸戸建てでも、無断で建物工事や捕獲を行わず、まず貸主・管理会社へ確認してください。
マンション・アパートでは建物全体の確認が必要な場合もある
集合住宅では、動物が一つの住戸だけで生活しているとは限りません。
屋根裏・外壁内・共用廊下側設備等を通って複数住戸周辺を移動している場合があります。
入居者一人で自室付近だけを塞ぐと、別の住戸や建物内部へ移動する可能性もあります。
管理会社が建物全体の侵入口や被害状況を確認する必要があります。
管理会社がなかなか対応しない場合
最初の連絡だけで終わらせず、被害が続いている場合は記録を残しながら再度連絡します。
伝えたいのは、
- 最初に連絡した日
- その後も足音が続いていること
- シミ・臭い等が拡大しているか
- 生活へどの程度影響しているか
- 現地調査予定が決まっているか
です。
民法には、貸主へ修繕の必要を通知した後、相当期間内に必要な修繕が行われない場合や急迫の事情がある場合に、借主が修繕できる規定もあります。
ただし、これを根拠に高額な害獣駆除工事を先に契約すれば、費用を必ず全額請求できるという意味ではありません。
大きな費用がかかる場合は、契約・管理会社とのやり取りを整理し、必要に応じて住宅・法律の相談窓口へ確認してください。
入居者負担になる可能性があるケース
貸主に修繕義務があるからといって、どのようなケースでも貸主が全額負担するわけではありません。
たとえば、借主の故意・過失によって被害や修繕範囲が生じたと認められる場合は、借主負担が問題になることがあります。
具体的な負担は、
- 賃貸借契約
- 特約
- 被害原因
- 発見時期
- 通知時期
- 被害拡大の経緯
を確認して判断します。
「害獣だから借主に責任がある」というだけでは判断できません。
退去時の原状回復トラブルを防ぐためにも記録を残す
天井シミや臭い、断熱材被害等が発生した場合は、入居中に管理会社へ報告した記録を残しておきます。
退去時に初めて被害が確認されると、いつ発生したのか、誰が把握していたのかを確認しにくくなります。
管理会社とのメール、管理アプリの履歴、写真等は保存しておくとよいでしょう。
管理会社へ伝える内容
連絡するときは、次の内容をまとめます。
- いつから音・臭い等があるか
- どの場所から音がするか
- 夜間だけか、昼間もするか
- 糞や天井シミがあるか
- ハクビシンらしい動物を見たか
- 写真・動画があるか
- 生活にどのような支障が出ているか
- 自治体制度を利用する場合、所有者同意等に協力してもらえるか
賃貸でハクビシンが出たときの対応順
- 天井裏へ入らず安全を確保する
- 足音・糞尿・シミ・臭いを記録する
- 賃貸借契約・特約を確認する
- 管理会社・大家へ速やかに連絡する
- 誰が現地調査を手配するか確認する
- 侵入口・動物種・被害範囲を調査する
- 自治体制度が使えるか確認する
- 捕獲が必要なら許可・制度を確認する
- 追い出しまたは適法な捕獲を行う
- 全個体・幼獣の不在を確認する
- 侵入口を封鎖する
- 糞尿・汚染断熱材等を処理する
- 天井・屋根・外壁等を必要に応じ修繕する
- 再発がないか確認する
業者を依頼する場合に確認すること
管理会社から自分で業者を探すよう案内された場合でも、契約前に確認しておきます。
- 入居者名義で契約してよいか
- 費用を誰が負担するか
- 指定業者があるか
- どこまで施工してよいか
- 外壁・屋根への施工承諾
- 調査費
- 追い出し・捕獲費
- 清掃・消毒費
- 断熱材交換費
- 侵入口封鎖費
- 再発保証
費用を比較する場合は害獣・害虫駆除の費用・相場、施工会社を選ぶ場合は害獣・害虫駆除業者の選び方も参考にしてください。
動物種がまだ分からない場合は症状・痕跡から害獣・害虫を調べる、天井裏など場所から調べる場合は住宅の場所から害獣・害虫を調べる、害獣全体は害獣対策の総合ページから確認できます。
よくある質問
賃貸の天井裏にハクビシンがいます。誰へ連絡すればよいですか?
まず管理会社または大家へ連絡してください。足音、糞尿、天井シミ等を安全な範囲で記録して伝えます。
ハクビシン駆除費は大家負担ですか?
一律には決まりません。建物側の侵入口・設備不良、借主の故意過失、契約内容、作業項目等を確認して判断します。
屋根の隙間から入っている場合は大家負担ですか?
建物側の修繕が必要な可能性が高いため管理会社・大家へ確認します。ただし、駆除・清掃・封鎖・修理のすべてが同じ負担になるとは限りません。
自分で駆除業者を呼んでもよいですか?
先に管理会社へ確認してください。指定業者や手配方法が決まっている場合があり、無断契約すると費用精算でトラブルになる可能性があります。
自分で箱わなを置いてもよいですか?
自己判断では行わないでください。ハクビシンの捕獲は鳥獣保護管理法の規制対象です。自治体・許可制度を確認します。
賃貸でも自治体の無料捕獲を使えますか?
自治体によります。民間集合住宅を対象とする自治体もあれば、所有者承諾が必要な地域、賃貸住宅を対象外とする地域もあります。
市役所が捕獲してくれれば費用は全部無料ですか?
そうとは限りません。現地調査・箱わな・捕獲が無料でも、糞尿清掃・消毒・侵入口封鎖・建物修繕は対象外となる制度があります。
管理会社に連絡せず自分で穴を塞いでもよいですか?
避けてください。賃貸建物の屋根・外壁・換気口等を無断施工しないことに加え、内部にハクビシンや幼獣が残っている状態で塞ぐ危険があります。
天井に尿のようなシミがあります。
ハクビシンの糞尿被害の可能性がありますが、雨漏り等も候補です。写真を残し、足音・臭い等の情報と一緒に管理会社へ報告してください。
管理会社が対応してくれません。
被害状況と連絡履歴を残し、再度対応予定を確認してください。大規模な修繕や高額業者契約を独断で進める前に、契約・住宅の相談窓口等への相談も検討します。
戸建て賃貸なら自分で屋根を直してよいですか?
戸建てを一棟借りていても、屋根・外壁等は建物本体です。貸主・管理会社の承諾なく補修するのは避けてください。
参考情報
- e-Gov法令検索「民法」
- 国土交通省「賃貸住宅標準契約書」
- 東京都環境局「野生鳥獣の捕獲について」
- 東京都北区「アライグマ・ハクビシンの被害を防ぐために」
- 町田市「アライグマ・ハクビシン防除事業」
- 府中市「ハクビシンやアライグマが家に棲みついてしまいました」
- 板橋区「ハクビシン(外来生物)の被害について」
- 公益社団法人東京都ペストコントロール協会「ハクビシンの特徴」
