コウモリ駆除の流れ|調査・追い出し・侵入口封鎖・糞清掃まで

住宅のコウモリ駆除は、コウモリを捕まえたり、その場から一度いなくならせたりすれば完了するものではありません。

住宅で問題になるアブラコウモリなどの野生鳥獣は、原則として許可なく捕獲・殺傷できません。そのため住宅対策では、現在の利用状況と侵入口を確認し、適切な時期に建物の外へ追い出し、内部に個体や幼獣が残っていないことを確認してから侵入口を塞ぐという流れが重要になります。

さらに、屋根裏や軒下に残った糞尿を処理し、必要なら汚染した断熱材や建材を復旧し、その後も再侵入がないか確認します。

まだコウモリかどうか分からない場合は、先に症状・痕跡から原因を確認するか、住宅に侵入する害獣の基礎情報から候補を整理してください。

目次

コウモリ駆除はどんな流れで行う?

住宅へ入り込んだコウモリへの対策は、概ね次の流れで進めます。

工程 主な内容
1. 痕跡と利用状況を確認する 夕方の出入り、糞、物音、目撃位置などから、コウモリが住宅を継続的に利用しているか確認します。
2. 法令と時期を確認する 無許可の捕獲・殺傷を避け、幼獣が飛べない時期や冬眠期ではないかも確認します。
3. 侵入口と被害範囲を調査する 軒下、屋根、換気口、戸袋、外壁などから出入りしている箇所と、糞尿汚染の範囲を確認します。
4. 建物の外へ追い出す 忌避剤などを状況に応じて使用し、捕獲・殺傷ではなく自力で外へ出るよう促します。
5. 全個体が外へ出たことを確認する 成獣だけでなく、飛べない幼獣や休眠状態の個体が内部に残っていないか確認します。
6. 侵入口を塞ぐ 使用中だった穴だけでなく、再侵入可能な隙間も確認し、建物の機能を損なわない方法で閉鎖します。
7. 糞尿・汚染物を処理する 糞、尿汚れ、巣材状の汚れ、必要に応じて汚染した断熱材などを処理します。
8. 再発していないか確認する 新しい糞、夕方の出入り、物音などが再び現れていないか確認します。

現場の構造によって清掃と最終的な封鎖の作業順が一部前後することはあります。ただし、コウモリが内部に残っている状態で外へ出られないよう完全に塞がないことが基本です。

1.本当にコウモリが住宅を利用しているか確認する

軒下に小さな黒い糞がある、夜に天井付近から音がする、といった一つの痕跡だけでは、コウモリと断定できない場合があります。

確認するときは、複数の情報を組み合わせます。

  • 日没前後に同じ隙間から小型のコウモリが出てくる
  • 軒下・換気口・外壁の下など同じ位置に糞が繰り返し落ちている
  • 屋根裏や壁内で物音がする
  • 外壁や開口部周辺に糞が付着している
  • 夕方に住宅周辺を飛んだ後、特定の隙間へ戻る

一度だけ室内へ入り込んだ個体と、屋根裏や外壁内部をねぐらとして継続利用している状態では、必要な対策が異なります。

2.捕まえる前に鳥獣保護管理法を確認する

コウモリは害虫のように自由に捕獲・殺傷してよい生き物ではありません。

鳥獣保護管理法では、野生鳥獣の捕獲や殺傷は、狩猟や許可を受けた捕獲などを除いて原則禁止されています。

そのため、住宅にコウモリが入ったからといって、自己判断で捕獲器を設置したり、粘着器具で捕まえたり、殺傷する方法を取ったりしないでください。

自治体によって相談窓口や許可制度の案内は異なります。

例えば横浜市は、コウモリについて市による捕獲・駆除は行っておらず、自力対応が難しい場合は専門業者への相談を案内しています。捕獲許可については県への確認が必要です。

3.時期を確認してから追い出し・封鎖を考える

コウモリ対策では、侵入口を見つけたからといって、その日のうちに穴を塞げばよいとは限りません。

住宅でよく見られるアブラコウモリは、初夏に出産し、一定期間は幼獣が自力で飛べません。

福岡県の生物多様性情報では6〜7月が出産期とされ、東京都多摩動物公園の解説でも、冬眠後の6月ごろに1〜4頭を出産し、幼獣は約1か月で親と同程度まで成長するとされています。

そのため、6〜8月ごろは飛べない幼獣が内部に残る可能性を考慮します。

浜松市や鳥取県も、6〜8月ごろの幼獣が飛べない時期は出入口を塞がないよう注意を促しています。

冬眠期にも注意する

アブラコウモリは春から秋に活発に活動し、気温が下がると活動量が低下します。

東京都多摩動物公園では11月ごろから3月まで冬眠状態になるとされ、前橋市は概ね11月から3〜4月ごろまで冬眠すると案内しています。

冬は外へ出ない日が続くことがあるため、夕方に姿が見えないという理由だけで「空になった」と判断して侵入口を塞ぐと、内部に個体を閉じ込める可能性があります。

実際の気候や建物環境によって活動時期には幅があるため、カレンダーだけで判断しないことが重要です。

4.コウモリの侵入口を特定する

追い出す前に、どこから出入りしているかを確認します。

住宅では次のような場所が確認対象になります。

  • 軒下・軒天の隙間
  • 屋根材と外壁の接合部
  • 瓦や屋根材の隙間
  • 換気口・通気口
  • 戸袋
  • シャッターボックス周辺
  • 外壁のひび・隙間
  • 配管や設備周辺の開口部

浜松市と鳥取県は、アブラコウモリが約1cm程度の隙間から侵入する場合があると案内しています。

これは「1cm未満なら絶対に侵入できない」という住宅用の保証値ではありません。隙間の形、個体差、周囲の構造もあるため、小さな開口部まで含めて確認する必要があります。

屋根・2階外壁・高所の換気口などを確認するために、無理にはしごや屋根へ上る必要はありません。住宅の部位ごとの侵入箇所は、家の場所別の害獣・害虫トラブルも参考にしてください。

5.捕獲ではなく建物の外へ追い出す

住宅対策では、内部にいるコウモリを捕まえるのではなく、自力で建物外へ出るよう促したうえで侵入経路を閉じる方法が基本になります。

北九州市は、屋根裏や軒下にいるコウモリについて、火を使用しない燻煙タイプの製品、忌避剤、光などを利用した追い出し方法を案内しています。

市販の製品を使う場合は、必ず対象動物・使用場所・使用方法を確認し、製品表示に従います。

また、追い出しに使う製品だけで長期的な再侵入を防げるわけではありません。

建物外へ出た後に侵入口を残せば、同じ場所へ戻る可能性があります。

6.全個体が外へ出たことを確認する

追い出し後に重要なのが、不在確認です。

1頭が外へ飛んでいったのを見ただけでは、屋根裏や壁内に別の個体が残っていないとは判断できません。

特に確認したいのは次のような状態です。

  • 夕方に同じ侵入口から複数個体が出ていないか
  • 追い出し後も内部から物音がしないか
  • 新しい糞が増えていないか
  • 飛べない幼獣がいる時期ではないか
  • 冬眠・休眠状態の個体が残る可能性がないか

内部に個体が残った状態で完全封鎖すると、コウモリが建物内に閉じ込められます。

浜松市も、コウモリがいる状態で穴を塞ぐと、内部で死亡して悪臭や虫の発生につながる可能性があるとして注意を促しています。

7.不在確認後に侵入口を塞ぐ

コウモリが残っていないことを確認したら、侵入口を物理的に閉鎖します。

この工程では、「現在使われていた入口だけ」を塞ぐのではなく、周辺に別の侵入可能な隙間がないかも確認します。

換気口や通気口は住宅に必要な機能を持っているため、単純に密閉するのではなく、通気を確保しながらコウモリが侵入できない構造にする必要があります。

封鎖材や補修方法は、穴の位置、建材、換気設備の有無によって変わります。

屋根、高所外壁、複雑な換気設備などをDIYで無理に補修しないようにしてください。

8.糞尿と汚染した場所を清掃する

コウモリがいなくなり、再侵入を防いでも、住宅内部に糞尿が残っていれば復旧は完了していません。

少量の糞が安全に手の届く場所へ落ちている場合と、狭い屋根裏に長期間蓄積している場合では、清掃の難易度が大きく異なります。

清掃時は、少なくとも次の点に注意します。

  • 糞を素手で触らない
  • 乾燥した糞を激しく掃いて舞い上げない
  • 家庭用掃除機で乾燥糞を直接吸い込まない
  • 糞を潰して種類を確認しない
  • 直接臭いを嗅がない
  • 市販の清掃・消毒用品は製品表示どおりに使う
  • 断熱材まで尿や糞で汚染されている場合は撤去範囲を確認する

大量の糞、狭い屋根裏、汚染した断熱材、高所作業を伴う場合は専門業者への相談を優先します。

コウモリの糞と感染症を必要以上に結び付けない

コウモリや鳥の糞で汚染された環境は、ヒストプラスマ症の感染源となり得ることが知られています。

ただし、国立健康危機管理研究機構は、日本で確認されているヒストプラスマ症について、現時点では主に海外で感染した輸入例と考えられ、年間数例程度としています。

そのため、日本の住宅でコウモリの糞を見つけたというだけで重大な感染症が起きると考える必要はありません。

一方で、乾燥した排泄物を不用意に舞い上げない、素手で触らないといった基本的な衛生対策は行います。

清掃と侵入口封鎖は必ず同じ順番になるわけではない

「追い出したら、封鎖してから清掃するのか、それとも清掃してから封鎖するのか」と迷うことがあります。

住宅の構造や作業経路によって、この2工程の細かな順序は前後することがあります。

例えば、屋根裏の点検口から清掃できる住宅では外側を先に封鎖してから内部清掃を行える場合があります。一方、封鎖すると作業できなくなる部分では、必要な清掃や確認を済ませてから最終的に閉じる場合もあります。

重要なのは次の3点です。

  1. 内部にコウモリや飛べない幼獣を残したまま完全封鎖しない
  2. 再侵入できる穴を最終的に残さない
  3. 糞尿などの汚染を処理せず閉じ込めない

「必ず封鎖が先」「必ず清掃が先」と機械的に決めるより、コウモリの不在を確認したうえで、建物構造に合わせて両方を完了させることが重要です。

9.施工後に再発していないか確認する

侵入口を塞ぎ、清掃が終わった後も、再び利用されていないか確認します。

見るべきなのは次のような新しい痕跡です。

  • 夕方に住宅からコウモリが出てくる
  • 封鎖した場所以外から出入りしている
  • 新しい糞が落ちている
  • 天井裏や壁内から再び物音がする
  • 封鎖材が外れている
  • 別の小さな隙間を利用している

再発した場合、単純に以前の穴を開け直すのではなく、別の侵入口を見落としていないかを確認します。

専門業者へ依頼するとどこまで作業する?

業者ごとに施工内容は異なるため、「コウモリ駆除一式」という表示だけで比較しない方がよいでしょう。

確認項目 見積もりで確認したいこと
現地調査 コウモリと判断した痕跡や、現在の利用状況を説明できるか
侵入口調査 一つの穴だけでなく、屋根・外壁・換気口などを確認するか
時期判断 幼獣期や冬眠期を考慮して施工方法を決めているか
追い出し 捕獲・殺傷ではなく、どのように建物外へ退出させるか
不在確認 成獣・幼獣を内部に残していないことをどう確認するか
侵入口封鎖 何か所を、どの材料・方法で閉鎖するか
糞尿清掃 糞の除去、汚染範囲の清掃が料金に含まれているか
断熱材・建材 汚染部分の撤去・交換や補修が必要な場合、別料金か
施工後確認 再発時の点検や保証がある場合、対象と条件は何か

追い出しだけの料金と、追い出し・侵入口封鎖・清掃・修繕を含む料金では施工範囲が異なります。

費用を確認するときは害獣・害虫駆除の費用と見積もりの見方、依頼先を比較するときは害獣・害虫駆除業者の選び方も参考にしてください。

自治体と専門業者の役割は同じではない

コウモリへの対応は自治体によって異なります。

自治体が相談や法令上の窓口を案内していても、住宅へ出向いて追い出し・侵入口封鎖・糞清掃まで行うとは限りません。

横浜市は、コウモリの捕獲や駆除を市では行っていないと案内しています。北九州市も住宅からの追い出し方法を案内していますが、捕獲には許可が必要としています。

そのため、居住地域の自治体で確認したいのは、捕獲してもらえるかだけではなく、相談窓口、捕獲許可の窓口、専門業者の紹介制度などがあるかです。

コウモリ駆除には何日かかる?

全国共通の標準日数はありません。

必要な期間は、侵入口の数、建物構造、利用個体数、季節、幼獣の有無、冬眠状態、糞尿被害、補修範囲などによって変わります。

特に、幼獣が飛べない時期や冬眠期に無理に作業を進めると、内部にコウモリを残したまま封鎖する可能性があります。

「必ず1日で終わる」といった日数だけを見るのではなく、追い出し・不在確認・封鎖・清掃のどこまでがその日程に含まれているのかを確認してください。

DIYより専門業者への相談を優先したい状態

安全な場所から糞や出入りを観察したり、室内へ迷い込んだ1頭が外へ出られるよう出口を確保したりする程度であれば、自分で対応できる場合があります。

一方、次のような状態では専門業者への相談を優先した方が安全です。

  • 屋根・2階外壁・高所に侵入口がある
  • 屋根裏や壁内へ継続的に出入りしている
  • 侵入口が複数あり特定できない
  • 6〜8月ごろで飛べない幼獣がいる可能性がある
  • 冬眠期で内部に個体が残っている可能性がある
  • 追い出した後の不在確認ができない
  • 大量の糞尿がある
  • 断熱材や建材まで汚染されている
  • 換気口など建物機能を保った封鎖が必要
  • 一度封鎖したのに再発している

特に、高所作業や建物補修を「コウモリが小さいから」という理由で簡単なDIYと考えないようにしてください。

よくある質問

コウモリを捕獲器で捕まえてもよいですか?

自己判断での捕獲は避けてください。コウモリを含む野生鳥獣の捕獲・殺傷は鳥獣保護管理法の対象で、原則として許可が必要です。住宅対策では、まず追い出しと再侵入防止を考えます。

コウモリが出ていったら、その日のうちに穴を塞いでも大丈夫ですか?

1頭が出たことだけでは内部が空とは限りません。複数個体や幼獣、冬眠状態の個体が残っていないことを確認してから封鎖します。

コウモリは1cmの隙間から入りますか?

浜松市や鳥取県は、アブラコウモリが約1cm程度の隙間から侵入する場合があると案内しています。ただし、1cmという数字だけで侵入可否を決めるのではなく、小さな隙間を幅広く確認してください。

糞清掃と侵入口封鎖はどちらを先にしますか?

現場構造によって細かな順番は前後します。重要なのは、コウモリの不在を確認する前に完全封鎖しないこと、最終的に侵入口を残さないこと、糞尿汚染を放置しないことです。

自治体に連絡すれば無料で駆除してもらえますか?

自治体によって対応が異なります。例えば横浜市はコウモリの捕獲・駆除を行っていません。居住地域の自治体で、相談内容と対応範囲を確認してください。

コウモリの糞は感染症が危険ですか?

糞で汚染された環境がヒストプラスマ症の感染源になることはありますが、日本の症例は現時点では主に輸入例と考えられ、年間数例程度です。必要以上に恐れるのではなく、素手で触れない、乾燥糞を舞い上げないなどの基本的な衛生対策を行います。

家の中に1匹だけ入ってきた場合も駆除工事が必要ですか?

必ずしも必要とは限りません。窓などから偶発的に1頭だけ入り込んだケースと、屋根裏や壁内を継続的にねぐらとしているケースは分けて考えます。外へ出した後も同じ場所で糞・物音・出入りが続くか確認してください。

コウモリ駆除は追い出した後の不在確認と封鎖までが重要

住宅のコウモリ対策では、「捕まえる」ことを出発点にしません。

現在の利用状況を確認し、法令と時期を確認したうえで侵入口を調べ、コウモリ自身が建物外へ出るよう追い出します。

その後、成獣だけでなく幼獣や休眠状態の個体も残っていないことを確認し、侵入口を閉鎖します。

さらに、残った糞尿や必要に応じて汚染した断熱材などを処理し、新しい糞や出入りがないことまで確認します。

幼獣期・冬眠期、高所、複数の侵入口、大量の糞、断熱材汚染、再発などが関係する場合は、無理にDIYを続けず、費用・見積もりと業者選びの基準を確認し、施工範囲を比較してください。

参考にした公的・一次情報

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この記事を書いた人

住宅で発生する害獣・害虫トラブルについて、公的機関・自治体・専門団体・学術情報などを確認しながら情報を整理しています。症状から原因を考え、安全な対処や専門業者へ相談する判断材料を提供することを目的としています。

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