シロアリ被害を調べるとき、重要な確認場所の一つが床下です。
日本の住宅で被害が多いヤマトシロアリは地中から建物へ侵入することが多く、床下の基礎や束石に蟻道を作り、その先にある土台・床束などの木材を食害することがあります。
ただし、「床下が湿っている=シロアリがいる」「ベタ基礎だから絶対にシロアリは出ない」といった単純な判断はできません。
床下を見るときは、どの部材が木材なのか、どこが侵入経路になりやすいのか、蟻道・食痕・水漏れ・湿気などがないかを分けて考えると状況を整理しやすくなります。
床下へ無理に潜る必要はありません。自分で確認する場合は、床下点検口などから安全に見える範囲までにとどめ、奥まで調べる必要がある場合は専門点検を検討してください。
なぜ床下はシロアリ確認で重要なのか
公益社団法人日本しろあり対策協会は、シロアリは地中から建物へ侵入することが多く、まず土台、床束、柱などの下部が食害されると説明しています。
ヤマトシロアリについては、台所、洗面所、トイレ、浴室など湿気が多い場所や、換気状態の悪い床下で土台・床束などに被害が出やすいとされています。
床下は、
- 地面や基礎に近い
- 建物を支える木材が集中している
- 水道・排水等の配管が通っている
- 漏水や湿気に気付きにくい
- 普段は目に入らない
という特徴があります。
そのため、室内では異常が見えなくても、床下で先に蟻道や木材の食害が見つかることがあります。
床下のどこがシロアリ被害を受ける?
住宅によって床組の構造は異なりますが、一般的な木造住宅では次のような部位があります。
| 床下の部位 | シロアリとの関係 |
|---|---|
| 基礎 | コンクリート自体が餌になるわけではないが、表面に蟻道を作って木部へ移動することがある |
| 束石 | 床束へ到達する経路として蟻道が確認されることがある |
| 土台 | 基礎上にある主要な木材。地中性シロアリによる代表的な被害部位 |
| 床束 | 大引などを支える部材。木製の場合は食害されることがある |
| 大引 | 床を支える横方向の構造材。蟻道が到達すると食害されることがある |
| 根太 | 床板を支える木材。食害や腐朽が進むと床のたわみ等につながる場合がある |
| 床板の裏側 | 蟻道・食痕・蟻土などが確認される場合がある |
| 配管貫通部 | 基礎や床を配管が通る部分の隙間が侵入経路になることがある |
最近の住宅では鋼製束や樹脂製の束、根太を使わない床構造などもあるため、すべての住宅に同じ部材があるわけではありません。
金属やコンクリートそのものがシロアリの餌にならなくても、それらを経由して上部の木材へ到達することがあります。
床下で特に確認したいのは蟻道
床下の基礎や束石に、土や泥を固めたような筋が地面から上へ伸びている場合は、シロアリの蟻道が候補になります。
シロアリは乾燥や光を避けながら移動するため、土砂などを使ったトンネル状の通路を作ります。
確認しやすい場所には、
- 基礎の立ち上がり
- 束石
- 土台との接続部分
- 配管周辺
- コンクリートの打継ぎ付近
などがあります。
ただし、泥状の筋を見つけても、その場で全部壊して確認するのは避けてください。
写真、位置、どこからどこへ伸びているかを記録し、必要なら専門調査へつなげます。
シロアリのサイン全体を確認したい場合は、害獣・害虫の症状・痕跡から調べるも参考にしてください。
蟻道以外に床下で見つかるサイン
床下では蟻道だけでなく、複数の異常を組み合わせて確認します。
| サイン | 考え方 |
|---|---|
| 木材表面の土・泥状の盛り上がり | 蟻土・蟻道の可能性 |
| 木材内部の食痕 | シロアリ等による食害候補 |
| 木材の一部が崩れる・薄くなる | 食害または腐朽による劣化を確認 |
| 木材の変色・カビ | 水漏れ・湿気・腐朽も含めて確認 |
| 配管周辺の水濡れ | 漏水とシロアリ・腐朽リスクの両方を確認 |
| 床の沈み・たわみ | シロアリだけでなく床材・床組・腐朽等も候補 |
一つのサインだけでシロアリと決めつけないことも重要です。
床がふわふわするからといってシロアリとは限らない
床下の根太、大引、床束などが大きく傷んだ場合、床が沈む・たわむといった変化が現れる可能性があります。
しかし、床のふわつきは、
- フローリングや下地材の経年劣化
- 水漏れによる腐朽
- 湿気による木材劣化
- 床組の不具合
- シロアリ食害
など複数の原因で起こります。
床の一部が大きく沈む場合は、何度も踏んで強度を確かめようとせず、使用を控えて点検してください。
木材を叩いて空洞音がすればシロアリ?
シロアリ被害が進んだ木材では、内部が食害されて空洞化し、叩いたときに通常とは異なる音がする場合があります。
日本しろあり対策協会も、被害が進んだ木材では空洞音が確認される場合があるとしています。
ただし、音だけでシロアリと断定することはできません。
木材の構造、接合状態、腐朽などでも音は変わります。
また、柱や床組を強く叩いたり、ドライバー等を深く差し込んで破壊的に確認したりする必要はありません。
床下の湿気が多いとシロアリがいる?
ヤマトシロアリは湿気の多い環境で被害が見られやすく、東京都や日本しろあり対策協会も、通気性の悪い床下や水回りを注意場所として挙げています。
そのため、
- 給排水管から水が漏れている
- 雨水が床下へ入っている
- 床下に水たまりがある
- 木材が継続的に湿っている
- 通風が悪い
状態は放置しない方がよいでしょう。
一方で、湿気があるからシロアリがいるとは限りません。
湿気は腐朽やカビの原因にもなります。また、イエシロアリのように水を運びながら加害する種類もあり、「床下が乾いているからシロアリ被害はない」とも断定できません。
床下換気扇や調湿材を入れればシロアリを防げる?
床下換気扇や床下調湿材について、日本しろあり対策協会は、床下環境を改善するものであり、シロアリ防除効果とは別と案内しています。
つまり、床下が湿っている住宅で環境改善が必要になることはあっても、
床下換気扇を付けたからシロアリ駆除・防除が完了するわけではありません。
すでに蟻道・食痕・羽アリ等がある場合は、湿気対策だけで済ませず、シロアリの有無と被害範囲を確認します。
ベタ基礎ならシロアリは出ない?
ベタ基礎は床下の地面をコンクリートで覆う構造で、シロアリ対策の面では布基礎より有利とされています。
ただし、ベタ基礎ならシロアリ被害が0になるわけではありません。
国土技術政策総合研究所の資料では、ベタ基礎でも、
- 底盤と基礎立ち上がりの打継ぎ
- 配管等の貫通部
- コンクリートの隙間
- 基礎断熱材周辺
などが侵入経路になる場合があるとされています。
国土交通省の資料でも、基礎を貫通する配管周辺の隙間を適切に処理しないと、シロアリの侵入経路になるおそれがあるとしています。
「コンクリートだから何も点検しなくてよい」ではなく、コンクリート表面の蟻道や打継ぎ・貫通部も確認します。
シロアリはコンクリートを食べるの?
シロアリがコンクリートそのものを木材のように食べて栄養にしているわけではありません。
しかし、コンクリートの表面に蟻道を作ったり、構造上の隙間や貫通部を利用したりして、その先にある木材へ到達することがあります。
鉄筋コンクリート造やブロック造でも内部に木材や家具などがあれば、シロアリ被害が起こる可能性があります。
配管の周りも確認する
床下には給水管、排水管、ガス管などが通っている住宅があります。
国土交通省は、基礎を貫通する配管周囲の隙間が適切に埋められていない場合、シロアリの侵入路になるおそれがあるとしています。
配管周辺では、
- コンクリートと配管の間に隙間がないか
- 蟻道が配管沿いに伸びていないか
- 水漏れがないか
- 周囲の木材が湿っていないか
を確認します。
ただし、自分で配管を動かしたり、床下で配管を分解したりする必要はありません。
床下に蟻道がなくてもシロアリ被害を完全には否定できない
地中から侵入するヤマトシロアリやイエシロアリでは床下の蟻道が重要な手掛かりになります。
一方、床下点検口から見える範囲に蟻道がないからといって、建物全体に被害がないとは限りません。
見えない基礎の裏側、壁内部、玄関周辺、浴室周辺などから侵入している場合があります。
また、アメリカカンザイシロアリなどの乾材シロアリは、地中性シロアリとは生態が異なり、床下から蟻道を作って侵入するとは限りません。
乾燥した砂粒状の糞が落ちている場合などは、床下とは別の経路も考えます。
自分で床下を確認できる範囲
床下点検口が安全に開けられる場合は、ライトやスマートフォンのカメラを使い、入口付近から見える範囲を確認できます。
確認するなら、
- 基礎に泥状の筋がないか
- 束石・床束に蟻道がないか
- 土台や大引に食痕・変色がないか
- 配管周辺に隙間・水漏れがないか
- 木材が濡れていないか
- カビや腐朽が目立たないか
を写真で残します。
床下点検口から奥が見えない場合でも、無理に潜る必要はありません。
床下には、
- 狭い空間
- 釘・金物
- 配管・配線
- 断熱材
- カビ・粉じん
- 水たまり
などがある場合があります。
奥まで確認する必要がある場合は専門点検を利用してください。
住宅の場所ごとに異常を整理する場合は、住宅の場所から害獣・害虫トラブルを調べるも参考にしてください。
専門点検では床下の何を見る?
日本しろあり対策協会の蟻害・腐朽検査制度では、シロアリだけでなく、腐朽、カビ、変色、湿気、通風状態なども診断対象としています。
床下では、
- 基礎・束石の蟻道
- 土台・床束・大引などの食害
- 蟻土
- 腐朽・カビ
- 床下温湿度
- 通風状態
- 地盤面の水分状態
- 木材の含水状態
- 配管の漏水
などを確認することがあります。
「床下を見ました」という口頭説明だけでなく、どこまで調べたのか、写真や報告書で確認すると判断しやすくなります。
シロアリ被害が見つかったら木材補修も分けて考える
シロアリを駆除しても、すでに食害された木材の強度が元に戻るわけではありません。
土台、床束、大引、根太などの被害が進んでいる場合は、
- シロアリ防除
- 被害木材の補強・交換
- 漏水・湿気原因の修繕
を分けて検討する必要があります。
特に床が大きく沈む、木材が崩れる、柱等に変形がある場合は、駆除費用だけでなく建築側の補修範囲も確認してください。
床下でシロアリを見つけたときに避けたいこと
- 蟻道を全部壊してしまう
- 床下へ無理に潜る
- 木材を深く削って被害確認する
- 見えるシロアリだけに殺虫剤を大量噴射する
- 自己判断で構造材へ穴を開けて薬剤を注入する
- 湿気対策用品を設置しただけで駆除できたと判断する
蟻道・羽アリ・食痕などは調査時の手掛かりになります。
見つけた状態をできるだけ写真で残し、位置が分かるようにしておきます。
専門業者へ相談した方がよいケース
次のような場合は、床下へ自分で入って確認するより専門点検を検討してください。
- 基礎・束石に蟻道らしい泥の筋がある
- 床下木材に明らかな食痕がある
- 家の中や床下付近から羽アリが出た
- 床が以前より大きく沈む・たわむ
- 木材が崩れるほど傷んでいる
- 床下で漏水や水たまりがある
- 点検口から奥の状態を確認できない
- ベタ基礎だが打継ぎ・配管周辺に蟻道がある
- 過去の防蟻施工時期が分からない
費用を確認する場合は害獣・害虫駆除の費用・相場、依頼先を比較する場合は害獣・害虫駆除業者の選び方も確認してください。
床下のシロアリ被害を予防するために確認したいこと
床下の予防では、シロアリ薬剤だけでなく、建物環境の維持も重要です。
- 給排水管の漏水を放置しない
- 床下へ雨水が入っていないか確認する
- 換気口や通風経路を物で塞がない
- 床下に不要な木材・木片等を残さない
- 基礎・配管貫通部の隙間や異常を確認する
- 定期的に床下や基礎を点検する
ただし、床下を乾燥させることだけで全種類のシロアリを防げるわけではありません。
環境改善と、防蟻処理・点検は分けて考えてください。
よくある質問
床下に蟻道があればシロアリは確定ですか?
シロアリの重要なサインですが、泥汚れや他の生物による構造物と誤認する場合があります。写真を残し、蟻道の形、木材の食痕、羽アリなど複数の情報で確認してください。
ベタ基礎ならシロアリ点検は不要ですか?
不要ではありません。ベタ基礎はシロアリ対策上有利ですが、基礎の打継ぎ、配管貫通部、ひび、基礎断熱周辺などから侵入する可能性があります。
床下がコンクリートならシロアリはいませんか?
コンクリート自体はシロアリの餌ではありませんが、その表面や隙間を移動して木材へ到達することがあります。コンクリート床下でも蟻道や貫通部を確認します。
床下が湿っていればシロアリがいますか?
湿気だけではシロアリの存在を断定できません。ヤマトシロアリが被害を出しやすい環境にはなりますが、湿気は腐朽やカビにも関係します。蟻道・食痕・羽アリなども併せて確認します。
床下換気扇を付ければシロアリを防げますか?
日本しろあり対策協会は、床下換気扇や調湿材を床下環境改善のためのものとし、シロアリ防除効果とは別としています。既存被害が疑われる場合は、換気設備だけで済ませず点検してください。
床がふわふわしていればシロアリですか?
シロアリ食害の可能性はありますが、水漏れ、腐朽、床材・下地材の劣化、床組の不具合でも起こります。床症状だけでシロアリと断定しないでください。
柱を叩いて軽い音がすればシロアリですか?
被害が進んだ木材で空洞音が出ることはありますが、音だけでは判断できません。木材を強く叩いたり削ったりせず、蟻道・食痕・羽アリなど他のサインと合わせて確認します。
床下を自分で全部点検できますか?
点検口から安全に見える範囲の確認はできますが、狭い床下へ無理に入ることは勧めません。奥までの確認、木材の状態確認、含水率や通風状態まで調べる場合は専門点検を検討してください。
床下でシロアリが見つかったら床も交換しますか?
被害程度によります。シロアリ防除だけで済む場合もあれば、土台・床束・大引・根太等の補強や交換が必要な場合もあります。駆除工事と建築補修は分けて見積もりを確認してください。
