アライグマ駆除の流れ|調査・捕獲・侵入口封鎖・糞清掃まで

アライグマ駆除は、屋根裏から一度追い出したり、箱わなで1頭捕まえたりすれば終わる作業ではありません。

アライグマは住宅へ繰り返し侵入することがあり、さらに日本では特定外来生物に指定されています。そのため、捕獲だけでなく、捕獲後の保管・運搬・放出についても法令上の扱いを確認する必要があります。

住宅被害を止めるには、現在の被害と侵入口を確認し、自治体の防除制度や法令を確認したうえで、追い出しまたは適法な捕獲を行い、内部に個体や幼獣が残っていないことを確認して侵入口を塞ぎ、糞尿などの汚染を処理するところまで一続きで考えます。

まだアライグマかどうか分からない場合は、先に症状・痕跡から原因を確認するか、住宅に侵入する害獣の基礎情報から候補を整理してください。

目次

アライグマ駆除はどんな流れで行う?

工程 主な内容
1. 被害・痕跡を確認する 足音、糞尿、足跡、夜間の目撃、天井シミなどを記録し、アライグマの可能性を確認します。
2. 自治体制度と法令を確認する アライグマは特定外来生物です。捕獲を始める前に、自治体の防除事業や必要な手続きを確認します。
3. 侵入口と被害範囲を調査する 屋根、軒下、換気口、床下通気口、戸袋、増築接合部などを確認します。
4. 追い出しまたは適法な捕獲を行う 現場状況に応じて追い出しを行うか、自治体の防除制度等に沿って捕獲します。
5. 全個体・幼獣の不在を確認する 成獣1頭だけでなく、別個体や幼獣が内部に残っていないか確認します。
6. 侵入口を物理的に塞ぐ 使用されていた穴だけでなく、再侵入できる別の隙間も確認して補修します。
7. 糞尿・汚染物を処理する 糞、尿汚れ、食べ残し、必要に応じて汚染した断熱材などを処理します。
8. 建物周辺の誘引要因を減らす 果実、生ごみ、ペットフード、屋根へ届く枝などを見直します。
9. 再発していないか確認する 新しい足音、糞、天井シミ、出入りがないか経過を確認します。

特に重要なのは、動物が内部に残ったまま侵入口を完全に塞がないことと、捕獲だけで住宅側の侵入条件を残さないことです。

1.最初にアライグマの可能性を確認する

夜に天井裏で大きな音がするだけでは、アライグマとは断定できません。ハクビシンやイタチなども住宅へ入り込みます。

東京都は、アライグマ・ハクビシンが住宅を利用している可能性を示すサインとして、次のような状態を挙げています。

  • 屋根裏で大きな音がする
  • 天井にシミができる
  • まとまった糞がある
  • 夜に屋根や庭で見慣れない動物を見る
  • 庭木の果実や家庭菜園が食べられる
  • 池の魚がいなくなる

アライグマの場合は、目の周囲の黒い模様、縞のある尾、長い5本指の足跡なども候補を絞る材料になります。

ただし、一つの痕跡だけで断定せず、写真や動画を残して複数のサインを照合します。

2.捕獲を始める前に自治体へ確認する

アライグマ対策では、捕獲手順より先に法令と自治体制度を確認することが重要です。

環境省はアライグマを特定外来生物として指定しています。

特定外来生物は、許可された場合や法に基づく防除などを除き、飼育・保管・運搬が原則禁止され、野外へ放すことも原則禁止されています。

そのため、住宅でアライグマを見つけても、自己判断で箱わなを置き、捕まえた個体を自宅で保管したり、車で別の場所へ運んで放したりする方法は避けてください。

また、野生鳥獣の捕獲には鳥獣保護管理法も関係します。

実際には、自治体が外来生物法に基づく防除計画などの枠組みで箱わなによる捕獲を実施している地域があります。

最初に居住地の自治体へ、次の点を確認します。

  • アライグマの防除・捕獲事業があるか
  • 住宅被害が制度の対象になるか
  • 現地調査があるか
  • 箱わなを誰が設置するか
  • 設置後の見回りを誰が行うか
  • 捕獲後の個体を誰が回収するか
  • 住宅の侵入口封鎖や糞清掃も対象になるか

自治体の捕獲事業と住宅工事は分けて考える

東京都では、区市町村が防除実施計画に基づいてアライグマ等の捕獲を実施しています。

ただし、自治体の捕獲支援と、住宅を再び侵入されない状態へ戻す工事は同じとは限りません。

例えば練馬区では、専門業者による調査や箱わなの設置を行い、利用者側が毎日見回る制度が設けられています。設置期間にも条件があります。

一方で、次のような作業は別途住宅側で対応が必要になることがあります。

  • 屋根や軒下の侵入口調査
  • 侵入口の物理封鎖
  • 外壁や屋根の修繕
  • 糞尿清掃
  • 汚染した断熱材の撤去・交換
  • 消臭などの復旧作業

自治体へ相談するときは、「捕獲してくれるか」だけではなく、住宅復旧のどこまでが制度対象か確認してください。

3.建物全体から侵入口を確認する

アライグマを捕獲または追い出しても、侵入口が残れば再び住宅へ入る可能性があります。

確認対象になるのは次のような場所です。

  • 軒下・軒天の破損
  • 屋根材の隙間
  • 床下通気口
  • 換気口
  • 戸袋
  • 外壁の破損
  • 増築部分と既存建物の接合部
  • 配管・設備周辺の開口部

八王子市は、アライグマ・ハクビシンが8cm四方程度の隙間から侵入できるとして、建物の周囲から侵入口を特定するよう案内しています。

ただし、この数字から「8cm未満なら安全」と逆算することはできません。隙間の形状や建物構造も含めて確認します。

また、侵入口は一か所とは限りません。

屋根や2階外壁など高所の確認が必要な場合は、自分で屋根へ上らず、専門業者へ依頼してください。

建物の場所ごとの被害は、家の場所別の害獣・害虫トラブルも参考にしてください。

4.追い出しだけでよい場合と捕獲が必要な場合を分ける

住宅内部にアライグマがいる場合、現場によっては忌避剤などを使って一時的に外へ出るよう促すことがあります。

東京都も、くん煙・くん蒸式の製品などによって屋根裏から追い出せる可能性があると案内しています。

ただし、東京都は同時に、忌避剤による追い出しだけでは個体数を減らす根本的な解決にはならないとしています。

追い出した個体が近隣の住宅へ移動することもあり、建物側の侵入口を残せば戻ってくる可能性もあります。

そのため、アライグマ対策では、状況に応じて自治体の防除事業による捕獲と、住宅側の侵入防止を組み合わせて考えます。

5.捕獲した個体を自分で運んで逃がさない

アライグマがハクビシンなどと大きく異なる点の一つが、特定外来生物であることです。

外来生物法では、特定外来生物の生体を保管・運搬することや、野外へ放すことが原則として規制されています。

環境省の防除制度では、適切な手続きを取った防除従事者について、捕獲から運搬までを行える仕組みがあります。

つまり、家庭で捕まえたアライグマを「かわいそうだから山へ連れていって放す」という対応はしないようにしてください。

捕獲が必要な場合は、自治体の防除制度や適切な捕獲業務の範囲で処理します。

6.全個体と幼獣がいなくなったことを確認する

成獣を1頭捕獲したり、1頭が外へ出るのを確認しただけでは、住宅内が空になったとは限りません。

東京都によると、アライグマは一般的には冬から春先に交尾し、春から初夏に出産しますが、夏以降の繁殖も確認されています。1回の出産数は約1〜6頭とされています。

そのため、春だけ幼獣に注意すればよいとは限りません。

封鎖前には、次のような点を確認します。

  • 内部から鳴き声や足音がしないか
  • 夕方から夜に出入りが続いていないか
  • 新しい糞が増えていないか
  • 幼獣が残っている可能性がないか
  • 複数の侵入口が残っていないか

内部に個体が残っている可能性がある状態で、すべての穴を一斉に塞ぐのは避けます。

7.不在確認後に侵入口を塞ぐ

個体がいないことを確認したら、侵入口を物理的に塞ぎます。

八王子市は、侵入口確認→動物の追い出し→金網等による封鎖、という順で対策を案内しています。

封鎖時は、現在利用されていた穴だけでなく、別の侵入可能な隙間も再確認します。

また、換気口や床下通気口は住宅本来の機能を持っているため、単純に密閉するのではなく、通気性などを保ちながら侵入を防げる施工が必要です。

高所、屋根、防水部分、複雑な換気設備などは無理にDIYしないようにしてください。

8.糞尿・食べ残し・汚染した断熱材を処理する

アライグマを外へ出し、侵入口を塞いでも、屋根裏に糞尿などが残っていれば住宅の復旧は終わりません。

東京都はアライグマ等による生活環境被害として、家屋の破損や、特に天井裏での糞尿汚損を挙げています。

確認したいのは次のような状態です。

  • 糞が複数残っている
  • 尿による天井シミがある
  • 強い尿臭・獣臭がする
  • 食べ残しがある
  • 断熱材に糞尿が染みている
  • 天井材や木部が汚染されている

アライグマの糞については、アライグマ回虫なども考慮して、素手で触らず、乾燥糞を不用意に舞い上げないようにします。

回虫卵への対処は一般的な消毒剤をかけるだけでは十分とは言えないため、汚染物そのものを安全に除去することが重要です。

大量の糞、古い糞、狭い屋根裏、断熱材への広範囲な汚染は専門清掃を優先してください。

9.庭や住宅周辺の餌と移動経路も見直す

東京都はアライグマ対策として、捕獲によって個体数を減らすことに加え、餌資源と繁殖場所をなくすことが重要だとしています。

住宅周辺では次の点を確認します。

  • 庭木の果実を放置しない
  • 家庭菜園を必要に応じて防護する
  • ペットフードを屋外へ放置しない
  • 生ごみを放置しない
  • 池の魚などを防護する
  • 家屋へ届く枝を整理する
  • 建物の破損箇所を修繕する

捕獲・追い出しだけでなく、「なぜこの住宅に入りやすかったのか」まで見直すことが再発防止につながります。

10.施工後に新しい痕跡がないか確認する

封鎖や清掃が終わった後も、再侵入がないか確認します。

  • 新しい糞が増えていないか
  • 夜間の天井裏の音が戻っていないか
  • 新しい天井シミが出ていないか
  • 夜に屋根や庭で再び目撃しないか
  • 封鎖部分が破損していないか
  • 別の隙間に新しい出入り跡がないか

再発した場合は、以前の侵入口だけを見るのではなく、建物全体を再確認します。

専門業者へ依頼すると何をする?

業者ごとに施工範囲は異なります。「アライグマ駆除一式」という表示だけで判断せず、何が含まれるか確認してください。

確認項目 見積もりで確認したい内容
現地調査 アライグマと判断した根拠や、現在の利用状況を説明できるか
自治体・法令確認 捕獲が必要な場合、どの制度・許可・防除計画に基づくか
侵入口調査 一つの穴だけでなく、屋根・外壁・換気口等を確認するか
追い出し どの方法を使い、追い出した後の不在をどう確認するか
捕獲 誰が捕獲・回収・運搬を担当するか
幼獣確認 内部に幼獣を残したまま封鎖しない工程になっているか
侵入口封鎖 何か所を、どの材料・方法で塞ぐか
糞尿清掃 糞・尿汚染・食べ残し等の除去が含まれるか
断熱材・建材 汚染部分の撤去・交換、天井等の修繕が別料金か
施工後確認 再発時の点検や保証がある場合、その条件は何か

費用を確認するときは害獣・害虫駆除の費用と見積もり、依頼先を比較するときは害獣・害虫駆除業者の選び方も参考にしてください。

「捕獲だけ」の見積もりと「住宅対策一式」は違う

アライグマ対策の費用を比較するときは、施工範囲をそろえる必要があります。

例えば自治体事業などで捕獲を行えても、次の工事は別になることがあります。

  • 屋根・外壁の侵入口調査
  • 侵入口封鎖
  • 高所作業
  • 糞尿清掃
  • 汚染断熱材の撤去・復旧
  • 消臭
  • 天井や外壁の修繕
  • 施工後の再発点検

「捕獲費用が安い」というだけでは、最終的な住宅復旧費用を比較できません。

アライグマ駆除には何日かかる?

全国共通の標準日数はありません。

必要な期間は、次の条件によって変わります。

  • 現在も建物内にいるか
  • 追い出しだけで対応できるか
  • 自治体の箱わな事業等を利用するか
  • 複数個体・幼獣がいる可能性
  • 侵入口の数
  • 高所作業の有無
  • 糞尿汚染の範囲
  • 断熱材や建材の修繕が必要か

練馬区の自治体事業では、箱わなの設置期間を原則1週間、最長2週間とする例がありますが、これは自治体制度の一例であって、全国のアライグマ駆除の標準期間ではありません。

また、その期間は住宅の侵入口封鎖や清掃工事の期間と同じとも限りません。

自分でできる範囲と専門対応へ切り替える目安

家庭で行いやすいのは、危険のない位置からの記録や環境改善です。

  • 足音・糞・足跡・目撃情報を記録する
  • 庭の果実や生ごみを片付ける
  • ペットフードを放置しない
  • 地上から建物の破損箇所を確認する
  • 安全に届く範囲の庭木や不用品を整理する

次の状態では、自治体または専門業者への相談を優先します。

  • 実際の捕獲が必要
  • 屋根・2階外壁など高所に侵入口がある
  • 侵入口が複数ある
  • 屋根裏の奥まで調査が必要
  • 幼獣がいる可能性がある
  • 個体不在を確認できない
  • 大量の糞尿がある
  • 断熱材や天井材が汚染されている
  • 一度対策したのに再侵入している

よくある質問

アライグマは追い出せば駆除完了ですか?

追い出しただけでは侵入口が残り、戻る可能性があります。また、忌避剤だけでは個体数を減らす根本的な対策にならない場合があります。不在確認、侵入口封鎖、糞尿清掃、再発確認まで考えます。

アライグマを1頭捕まえれば終わりですか?

1頭捕獲しても、別個体や幼獣が残っていないとは判断できません。侵入口も残っていれば別の個体が入り込む可能性があります。

自分で箱わなを設置してもよいですか?

自己判断で始めるのではなく、自治体へ防除制度や捕獲の扱いを確認してください。アライグマは特定外来生物であり、鳥獣保護管理法も関係します。

捕まえたアライグマを山へ逃がしてもよいですか?

避けてください。アライグマは特定外来生物で、生体の運搬や野外への放出は原則として規制されています。捕獲後の処理は自治体等の適切な防除の枠組みで行います。

追い出したらすぐ穴を塞いでも大丈夫ですか?

内部に別個体や幼獣が残っていないことを確認してから封鎖します。季節だけで不在を判断せず、実際の出入り、音、糞なども確認してください。

自治体へ連絡すれば全部無料で駆除してもらえますか?

自治体によって制度が異なります。箱わなの設置や捕獲を支援する地域はありますが、侵入口封鎖、糞尿清掃、断熱材交換、住宅修繕まで含まれるとは限りません。

アライグマ駆除で消毒は必ず必要ですか?

汚染状況によります。重要なのは、糞尿や汚染物そのものを安全に除去することです。特にアライグマ回虫卵は一般的な薬剤だけで確実に処理できるとは言えないため、消毒剤をかけるだけで完了とは考えません。

春以外なら幼獣はいないので穴を塞いでも大丈夫ですか?

季節だけでは判断できません。東京都は春〜初夏の出産が一般的としつつ、夏以降の繁殖も確認しています。内部の個体・幼獣の不在を確認してから封鎖します。

アライグマ駆除は「捕獲」と「住宅の再侵入防止」を分けて考える

住宅のアライグマ対策では、目の前の1頭を捕獲することだけをゴールにすると再発しやすくなります。

被害サインを確認し、自治体の防除制度と法令を確認したうえで、建物全体の侵入口と被害範囲を調査します。

状況に応じて追い出しまたは適法な捕獲を行い、全個体・幼獣の不在を確認してから侵入口を塞ぎます。

さらに糞尿や汚染した断熱材等を処理し、果実・生ごみ・屋根へ届く枝などの誘引要因も見直し、新しい足音・糞・出入りがないところまで確認します。

アライグマは特定外来生物なので、自己判断による捕獲後の保管・運搬・別場所への放出は行わず、自治体や適切な専門業者の制度・作業範囲を確認してください。

参考にした公的・一次情報

この記事を共有する
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

住宅で発生する害獣・害虫トラブルについて、公的機関・自治体・専門団体・学術情報などを確認しながら情報を整理しています。症状から原因を考え、安全な対処や専門業者へ相談する判断材料を提供することを目的としています。

目次