シロアリ駆除や予防を検討するとき、「床下へ薬剤を撒いて、人体に影響はないのか」「赤ちゃんやペットがいても施工できるのか」と不安になることがあります。
公益社団法人日本しろあり対策協会は、防除に使用する薬剤について、効力だけでなく安全性、環境への負荷、使用方法、使用後の廃棄方法などを総合的に審査したうえで認定しています。
一方で、認定薬剤だからといって「どんな人にも完全に無害」「どのような使い方をしても安全」という意味ではありません。
安全性を考えるときは、何の薬剤を、どこへ、どの濃度・方法で施工するのかと、乳幼児・アレルギー体質・ペットなど住宅ごとの事情を分けて確認することが重要です。
シロアリ対策全体についてはシロアリ対策の基礎情報もあわせて確認してください。
シロアリの認定薬剤は「安全性基準を満たした薬剤」
日本しろあり対策協会では、シロアリ防除に使用される土壌処理剤や予防駆除剤について、効力と安全性などを審査して認定しています。
審査対象には次のような項目が含まれます。
- シロアリに対する防除効果
- 人への安全性
- 環境への負荷
- 使用方法
- 使用後の廃棄方法
協会は「どの薬剤が一番安全か」という質問に対して、安全性を測る基準はいくつもあり、すべての項目で一番という薬剤はないと説明しています。
つまり、薬剤を選ぶときは「最強」「一番安全」という広告表現だけではなく、認定の有無、使用成分、施工方法、住宅条件まで確認します。
「認定薬剤=完全に無害」ではない
ここは誤解しやすいところです。
認定薬剤は安全性の基準を満たしていますが、薬剤である以上、どんな条件でも影響がゼロになることを意味するものではありません。
日本しろあり対策協会も、アレルギー反応については個人差があるため、使用する薬剤を確認し、必要に応じて医師へ相談するよう案内しています。
したがって、次のように考えるのが適切です。
| 考え方 | 判断 |
|---|---|
| 認定薬剤だから何をしても安全 | 誤り。用法・施工基準を守ることが前提です。 |
| シロアリ薬剤だから危険で使えない | 一律には言えません。認定薬剤と適正施工を前提に安全性が評価されています。 |
| 天然成分なら絶対安全 | 一律には言えません。天然物にも毒性・刺激性はあり得ます。 |
| 家族の体質も施工前に伝える | 重要です。薬剤・工法を選ぶ材料になります。 |
日本しろあり対策協会の認定は国の医薬品・農薬承認とは別
認定制度の意味も正確に理解しておきたいところです。
日本しろあり対策協会によると、防蟻・防腐剤に使われる有効成分には化学物質関連法令の規制がありますが、防蟻・防腐用の製剤自体は、医薬品や農薬と同じ制度で個別承認されるものではありません。
そのため協会が、専門家による委員会で効力・安全性・環境負荷などを審査する認定制度を設けています。
「協会認定」と「国が医薬品・農薬として承認した」という意味を混同しないことも、業者説明を理解するうえで重要です。
赤ちゃん・小さな子どもがいても施工できる?
日本しろあり対策協会は、新生児がいる住宅について、認定薬剤であれば安全性は確認されているとしています。
一方で、より安全側に考え、施工中は処理を行う場所から離れるよう案内しています。
そのため、乳幼児や小さな子どもがいる住宅では、施工前に次の点を業者へ確認しておくとよいでしょう。
- 使用する薬剤の商品名
- 有効成分
- 日本しろあり対策協会等の認定状況
- 床下だけの施工か、室内側にも処理するか
- 施工中にどの部屋を空ける必要があるか
- 施工後いつ通常どおり使用できるか
- 換気について指示があるか
「子どもがいるので安全な薬剤にしてください」とだけ伝えるより、使用薬剤と施工場所を具体的に確認した方が判断しやすくなります。
施工中は薬剤散布を行う場所へ入らない
日本しろあり対策協会は、認定薬剤を標準仕様書・安全管理基準に沿って施工することを前提に安全性を説明する一方、散布中は施工現場へ入らないよう案内しています。
薬剤が安全性基準を満たしているからといって、散布中の霧や液体へわざわざ近づく必要はありません。
乳幼児、子どもだけでなく、ペットについても施工中は処理場所へ近づけないようにし、施工業者が案内する再入室・換気方法に従います。
ペットがいる場合は施工前に必ず伝える
犬や猫などのペットがいる住宅では、見積もり段階でそのことを業者へ伝えてください。
確認したいのは、単に「ペットにも安全ですか」と聞くだけではありません。
- ペットが普段いる場所で薬剤処理をするか
- 施工中に別室・別場所へ移動する必要があるか
- 処理面へ直接触れる可能性があるか
- 使用薬剤のメーカーが示す注意事項
- 薬剤散布を減らせる工法が使えるか
ペットの種類や飼育環境もさまざまなので、「ペットがいる住宅ならすべて同じ」とは考えず、使用製品ごとの情報を確認します。
薬剤散布が心配ならベイト工法も選択肢になる
シロアリ防除には、床下の木部や土壌へ薬剤を施工する方法だけでなく、ベイト工法もあります。
ベイト工法は、シロアリが食べる餌剤を専用容器へ設置し、巣へ持ち帰らせてコロニーの衰退・駆除を狙う方法です。
日本しろあり対策協会は、従来型の施工と比較して薬剤使用量を大幅に抑え、薬剤が環境へ流出しにくい閉鎖型の仕組みとして説明しています。
アレルギーなどで薬剤散布に不安がある場合、協会もベイト工法を業者へ相談する選択肢として挙げています。
ベイト工法も「薬剤を一切使わない」方法ではない
ここも表現に注意が必要です。
ベイト工法は床下全面へ液剤を散布しない方法ですが、シロアリを駆除するベイト剤そのものには有効成分が含まれています。
「無薬剤」「薬剤をまったく使わない」と理解するのではなく、薬剤を限定された場所・容器で使用し、散布量や接触機会を抑える工法と考えた方が正確です。
例えばセントリコンでは、薬剤を専用ステーション内に収容する方式を採用し、ペットがいる住宅では散布式よりベイト工法を選択肢として案内しています。
床下の空気を室内へ循環させる住宅は工法を確認する
床下空間と室内空気を循環させる住宅では、一般的な床下構造と薬剤への考え方が異なる場合があります。
日本しろあり対策協会は、床下の空気を室内へ循環させるタイプの住宅について、ベイト工法を推奨しています。
床下暖房、基礎断熱、全館空調など特殊な空調・換気構造がある場合は、契約前に必ず業者へ伝え、住宅構造に合った工法か確認してください。
天然成分なら合成薬剤より安全とは限らない
「ヒバ油」「天然成分」「自然素材」と書かれていると、合成薬剤より必ず安全な印象を受けることがあります。
しかし、日本しろあり対策協会は、天然物だから安全、合成物だから危険とは一概に言えないとしています。
天然由来かどうかより、次の情報を確認します。
- 有効成分
- 毒性・刺激性等の安全性データ
- 使用濃度
- 施工量
- 施工場所
- 認定の有無
- メーカーの使用上の注意
「天然だから何となく安心」という理由だけで選ぶのは避けた方がよいでしょう。
ホウ酸も「天然・無害」とだけ考えない
ホウ酸を使用するシロアリ対策もあります。
日本しろあり対策協会は、日本木材保存協会で木材表面処理剤として条件付きで認定されているものについて、用法・用量を守れば防蟻効果があると説明しています。
一方で、水に溶けやすいため雨水等がかからないよう施工する必要があります。
ホウ酸についても、「天然由来だから何をしても安全」という扱いではなく、製品ごとの使用条件を確認します。
アレルギー体質・化学物質への不安がある場合
アレルギー反応は人によって異なるため、「アレルギーの人でも絶対に問題が起きない薬剤」を一律に選ぶことはできません。
日本しろあり対策協会は、アレルギー体質の家族がいるケースについて、使用薬剤を確認したうえでかかりつけ医へ相談するよう案内しています。
施工前には、業者から次の情報を取得しておくとよいでしょう。
- 薬剤の商品名
- メーカー名
- 有効成分
- 安全データシート(SDS)等の安全情報
- 施工方法
- 施工量・処理範囲
薬剤散布への不安が大きい場合は、ベイト工法が使用できる建物かも相談します。
施工後にせき・体調不良などが出た場合
施工後にせき、刺激感などの体調変化が起きても、症状だけからシロアリ薬剤が原因だと断定することはできません。
ただし放置せず、何の薬剤を使用したのか確認してください。
日本しろあり対策協会は、施工後に強いせきが出たケースについて、施工業者へ使用薬剤を確認し、薬剤メーカーの相談窓口と医療機関へ相談するよう案内しています。
受診時に薬剤の商品名・有効成分・施工日が分かると、医療機関へ情報を伝えやすくなります。
薬剤が室内へ垂れた・付着した場合
木材へ薬剤を注入する施工などでは、処理箇所によって室内側へ薬液が垂れることがあります。
日本しろあり対策協会は、認定薬剤が垂れた事例について、きちんと水拭きすれば問題ないと案内しています。
ただし、大量に漏れた、家具や食品へ付着した、使用薬剤が不明といった場合は、自己判断だけで済ませず施工業者へ連絡し、使用製品のメーカー指示も確認してください。
施工後の臭いだけで危険性は判断できない
現在のシロアリ防除剤には低臭性の製品もありますが、施工条件や製剤によって臭いの感じ方は異なります。
また、施工時に床下点検口を開けることで、床下の湿気やカビなど別の臭いが室内へ上がることもあります。
「臭わない=完全に安全」「臭いがする=有害」と臭気だけで判断しないようにします。
施工後の換気や通常生活へ戻るタイミングについて、全国共通の時間を決めることもできません。使用薬剤・工法ごとに施工業者とメーカーの指示を確認してください。
シロアリ防除では木部処理と土壌処理がある
薬剤の安全性を考えるうえでは、「薬剤名」だけでなくどこへ処理するのかも重要です。
日本しろあり対策協会の標準的なシロアリ防除では、主に木部処理と土壌処理があります。
木部処理
シロアリ被害を受けやすい木材へ薬剤を処理します。
状況によっては木材表面への処理だけでなく、被害部分などへ穿孔し薬剤を注入することがあります。
土壌処理
地中から建物へ侵入するヤマトシロアリ・イエシロアリ等を防ぐため、基礎内側や束石周辺などの土壌を処理します。
同じ有効成分でも、処理対象や製品によって使用方法は異なります。家庭で濃度や散布量を自己判断して真似するのは避けてください。
業者へ依頼する前に確認したい7項目
| 確認項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 使用薬剤の商品名 | 安全情報・メーカー情報を自分でも確認できる |
| 認定・登録 | どの基準で評価された製品か確認できる |
| 有効成分 | アレルギー等の相談時に必要になる |
| 施工場所 | 床下だけか、室内側も処理するかで接触機会が異なる |
| 工法 | 散布式かベイト工法かを比較できる |
| 施工中・施工後の注意 | 退室・換気・ペット移動などの必要性を確認できる |
| SDS等の安全情報 | 薬剤の性質と緊急時の対応を確認できる |
説明を求めても薬剤名や成分を教えない、使用量や施工場所を説明できない場合は、そのまま契約を急がず確認した方がよいでしょう。
依頼先を比較するときは害獣・害虫駆除業者の選び方、費用を確認するときは害獣・害虫駆除の費用と見積もりも参考にしてください。
自分で薬剤を撒けば安全性を調整できる?
専門施工で使われる薬剤の安全性を心配して、自分で薄く撒けば安全だと考えるのは適切ではありません。
薬剤は、対象、濃度、使用量、処理場所、施工方法を前提に効果と安全性が成り立っています。
自己判断で次のようなことは行わないでください。
- 表示より濃い濃度にする
- 複数の薬剤を混ぜる
- 床下全面へ大量散布する
- 構造材へ自己流で穴を開けて注入する
- 室内用でない薬剤を室内へ散布する
自分でできる範囲と既存被害を専門施工へ切り替える目安は、シロアリDIY対策の記事と分けて確認してください。
よくある質問
シロアリの薬剤は人体に安全ですか?
日本しろあり対策協会の認定薬剤は、安全性等の基準を満たしたものです。ただし、完全に無害という意味ではなく、認定された用途・施工方法を守ることが前提です。
赤ちゃんがいても施工できますか?
協会は認定薬剤について安全性が確認されているとしていますが、施工中は処理場所から離れるよう案内しています。使用薬剤と施工範囲を事前に業者へ確認してください。
ペットがいても大丈夫ですか?
使用する薬剤・工法によって異なります。施工中は処理場所へ近づけず、ペットがいることを事前に業者へ伝えます。散布を抑えたい場合はベイト工法も選択肢になります。
天然成分の薬剤なら安全ですか?
天然物だから必ず安全、合成物だから危険とは言えません。有効成分、安全性データ、施工量、使用条件を確認してください。
ベイト工法は薬剤を使わないのですか?
床下全面への液剤散布は行いませんが、ベイト剤にはシロアリを防除する有効成分が含まれています。薬剤使用量や飛散・接触機会を抑える工法と考える方が正確です。
アレルギー体質でも使える薬剤はありますか?
アレルギー反応には個人差があるため、全員に問題が起きない薬剤を一律に決めることはできません。使用予定の薬剤を確認し、必要なら医師やメーカーへ相談してください。
施工後に体調が悪くなったらどうすればよいですか?
施工業者へ薬剤名・メーカー・施工内容を確認し、薬剤メーカーの相談窓口と医療機関へ相談してください。症状だけで原因を断定しないことも重要です。
安全性は「薬剤名」だけでなく工法・施工条件まで確認する
シロアリ防除薬剤について、「安全」「危険」の二択だけで判断するのは適切ではありません。
認定薬剤は安全性等の基準を満たしていますが、それは適切な用途・施工方法を守ることが前提です。
乳幼児、子ども、ペット、アレルギー体質の家族がいる場合は、その事情を契約前に業者へ伝え、使用薬剤、成分、施工場所、施工中・施工後の注意事項を確認してください。
薬剤散布への不安が強い住宅では、ベイト工法など別の施工方法を比較することもできます。
「天然だから安全」「認定だから無害」「臭わないから問題ない」と単純化せず、住宅と家族の条件に合う方法を選ぶことが大切です。
