賃貸マンションやアパート、戸建てでネズミやハクビシン、イタチ、コウモリなどが出た場合、「駆除費用は大家が払うのか、それとも入居者なのか」が大きな問題になります。
結論を一律に決めることはできません。
費用負担は、
- どこから害獣が侵入したか
- 建物の破損・隙間が原因か
- 専有部分だけの問題か
- 共用部・建物全体の問題か
- 入居者の故意・過失があるか
- 発見後にすぐ管理会社へ連絡したか
- 賃貸借契約にどのような特約があるか
などによって変わります。
特に避けたいのは、管理会社や大家へ何も伝えず、自分で数十万円の害獣駆除契約を結んでから「大家に払ってほしい」と請求する進め方です。
まず被害を記録し、管理会社・大家へ連絡し、原因調査と誰が業者を手配するのかを確認してから施工へ進む方がトラブルを防ぎやすくなります。
このページでは、賃貸住宅における害獣駆除費用について、大家・管理会社・入居者それぞれの負担が考えられるケース、連絡手順、実際の駆除料金まで整理します。
賃貸で害獣が出たら、まず管理会社・大家へ連絡する
賃貸住宅で害獣被害が起きた場合、自分で駆除業者を探すより先に、管理会社または大家へ連絡します。
国民生活センターも、賃貸住宅の場合には害虫・害獣駆除業者へ依頼する前に、管理会社や大家などへ相談することを勧めています。
連絡するときは、単に「動物がいる」と伝えるだけでなく、
- いつ気付いたか
- どこで音がするか
- 何を目撃したか
- 糞がある場所
- 天井や壁のシミ
- 臭い
- かじり跡
- 建物外側の侵入口候補
を伝えます。
写真・動画・録音も残しておくと、原因確認や費用負担について話す際の資料になります。
必要な修繕は原則として貸主側の義務
民法第606条では、賃貸人は賃貸物を使用・収益するために必要な修繕を行う義務を負うとされています。
国土交通省の賃貸住宅に関するQ&Aでも、住宅を使用するために必要な修繕について、原則として貸主が修繕義務を負うと説明しています。
例えば、
- 外壁が壊れている
- 屋根や軒に大きな隙間がある
- 床下換気口が破損している
- 共用配管周辺に侵入口がある
- 建物の老朽化によって隙間ができている
といった建物側の問題によって害獣が侵入している場合は、建物修繕を貸主側で行う必要性が高くなります。
ただし「害獣駆除費用=必ず大家負担」ではない
民法上の修繕義務があるからといって、害獣に関するすべての費用が自動的に大家負担になるわけではありません。
害獣被害では、
- 侵入口を直す建物修繕
- 動物を追い出す・捕獲する費用
- 糞尿清掃
- 消毒・消臭
- ノミ・ダニなどへの処理
- 被害を受けた家財の処理
など、性質の違う費用が発生します。
どこまでが貸主側の修繕義務として扱われ、どこからが入居者側の負担になるかは、発生原因や契約内容によって変わります。
大家・管理会社側の負担になりやすいケース
個別事情によって変わりますが、次のような状態では、貸主側で調査・修繕・駆除を検討する合理性があります。
建物の構造的な隙間から侵入している
- 屋根の隙間
- 破損した軒
- 外壁の穴
- 基礎の破損
- 換気口の破損
- 共用配管周辺
など、入居者が通常管理できない建物部分から侵入している場合です。
複数の住戸で被害が発生している
マンション・アパートで複数世帯からネズミの物音や糞の相談が出ている場合、一住戸だけの問題ではなく、建物全体の侵入経路が原因になっている可能性があります。
練馬区は2026年の集合住宅向けネズミ対策資料で、賃貸住宅については家主や管理会社が主体となり、被害状況や侵入経路を確認することが重要としています。
共用部分から侵入している
例えば、
- 共用天井
- 共用廊下
- 共用配管
- 屋根
- 外壁
- ゴミ置き場
などが原因なら、入居者一人では対策できません。
入居前から被害があった
入居直後から害獣の物音や糞があり、以前から建物内に住み着いていたと考えられる場合も、入居者だけの責任とは考えにくい状態です。
入居者側の負担が問題になるケース
一方、民法第606条では、借主側の責任によって修繕が必要になった場合には貸主の修繕義務の例外となります。
東京都の賃貸住宅トラブル防止ガイドラインも、借主の責任によって生じたものや、不具合を放置したために発生・拡大した損傷については借主負担が原則と説明しています。
害獣被害で考えられるのは、例えば次のようなケースです。
入居者が建物へ穴を開け、それが侵入口になった
無断で設備を設置するなどして外壁や建物部分へ穴を開け、その穴から害獣が侵入した場合です。
明らかな被害を長期間放置した
早期に管理会社へ知らせれば小規模な修繕で済んだのに、長期間放置して建材・断熱材への被害が拡大した場合、追加被害について負担問題になる可能性があります。
入居者側の管理が主な原因と判断される
食品や生ごみなどの管理状態が被害拡大に関係する場合もあります。
ただし、「部屋が散らかっていたから害獣駆除はすべて借主負担」と単純に判断できるわけではありません。
建物側に侵入口があれば、複数の原因が重なっている可能性があります。
害獣を見つけたら早めに通知する
民法第615条では、賃貸物に修繕が必要になったことを借主が知った場合、貸主がすでに知っている場合を除き、遅滞なく通知することが定められています。
害獣が天井裏へ侵入している場合も、
- 天井の破損
- 断熱材の汚染
- 配線被害
- 糞尿被害
など建物修繕につながる可能性があります。
「しばらく様子を見よう」と数か月放置するより、異変に気付いた段階で管理会社・大家へ記録付きで知らせる方が安全です。
連絡は電話だけでなく記録を残す
電話で連絡して終わりにするのではなく、メールや管理アプリなどでも記録を残すとよいでしょう。
例えば、
- 9月10日ごろから毎晩天井裏で音がする
- 9月12日に天井から茶色いシミを確認
- ベランダ側の軒下に穴がある
- 写真・動画を添付
と具体的に伝えます。
勝手に高額な業者を呼んでから大家へ請求しない
賃貸住宅では、害獣を見つけて不安になっても、管理会社へ何も伝えず、いきなり20万円・30万円の施工を契約するのは避けた方がよいでしょう。
理由は、
- 大家側が別の指定業者を使う予定だった
- 建物全体の調査が必要だった
- 不要な工事まで契約している
- 大家側が施工内容・料金を承認していない
などの場合、後から全額を支払ってもらえるとは限らないためです。
まず、
- 被害を記録する
- 管理会社・大家へ通知する
- 誰が業者を手配するか確認する
- 費用負担を確認する
- 施工内容を確認する
という順番で進めます。
貸主が対応してくれない場合はどうする?
民法では、修繕が必要な場合に、
- 借主が貸主へ修繕の必要性を通知したにもかかわらず、相当期間内に必要な修繕をしない場合
- 急迫の事情がある場合
には、借主が自ら必要な修繕を行える場合があるとされています。
ただし、これは「自分で好きな害獣駆除業者を呼べば、費用は必ず全額大家へ請求できる」という意味ではありません。
害獣駆除費と建物修繕費の区別、緊急性、施工の必要性、費用の妥当性などによって判断が変わります。
高額な施工を自己判断で契約する前に、管理会社、貸主、必要に応じて消費生活・法律相談窓口へ確認する方が安全です。
緊急性が高い場合
次のような状態では、通常より早い対応が必要です。
- 動物が居室内へ入ってきた
- 電気配線をかじられ焦げ臭い
- 天井が糞尿で大きくたわんでいる
- 天井材が落下しそう
- 人やペットへの直接的な危険がある
人命・火災などの危険がある場合は、害獣費用の話だけでなく、消防・電気・建物設備など必要な専門対応を優先します。
賃貸マンション・アパートでは建物全体の確認が重要
集合住宅の場合、一部屋だけ駆除しても根本解決しないことがあります。
練馬区は、集合住宅でネズミ被害が起きた場合、賃貸住宅では家主・管理会社が主体となって、
- 被害発生の周知
- アンケート等による被害状況の把握
- 侵入経路の確認
- ゴミ置き場等の調査
を行うことが重要としています。
この考え方はネズミ以外でも、共用部分を使って移動する害獣の原因確認を考える際の参考になります。
賃貸戸建てでも先に大家へ連絡する
一戸建てを借りている場合でも同じです。
屋根、軒、外壁、床下換気口などは建物本体に関わります。
入居者が勝手に金網をビス止めしたり、屋根へ施工したりすることは避け、建物所有者へ確認します。
ネズミの場合
ネズミは配管周辺、壁内、天井裏などを移動するため、集合住宅では複数戸にまたがることがあります。
自室だけで粘着シートを置くより、建物側の侵入口調査が必要な場合があります。
マンションのネズミ費用についてはマンションのネズミ駆除費用で詳しく説明しています。
ハクビシンの場合
ハクビシンは屋根・軒などから天井裏へ侵入し、糞尿被害を起こすことがあります。
賃貸戸建てで屋根側から侵入している場合、建物修繕と駆除の両方が必要になる可能性があります。
詳しくはハクビシン対策をご覧ください。
アライグマの場合
アライグマは力が強く、建物の一部を広げるなどして侵入する場合があります。
また、捕獲等には法令・自治体の制度が関係するため、入居者が自己判断で罠を設置するのは避けます。
詳しくはアライグマ対策をご覧ください。
イタチの場合
イタチは小さな隙間から侵入し、天井裏や断熱材などを利用する場合があります。
捕獲については鳥獣保護管理法などの確認が必要です。
詳しくはイタチ対策をご覧ください。
コウモリの場合
コウモリは軒・換気口・外壁の小さな隙間などを利用します。
日本のコウモリは野生鳥獣として扱われるため、自己判断で捕獲・殺傷するのではなく、適切な追い出しと再侵入防止を検討します。
賃貸住宅の外壁・換気口等を施工するなら、建物所有者側との調整が必要です。
詳しくはコウモリ対策をご覧ください。
害獣駆除には実際いくらかかる?
賃貸でも持ち家でも、業者料金そのものは被害状況によって変わります。
2026年9月時点で、害獣駆除110番が掲載している最低表示料金は次のとおりです。
| 害獣 | 最低表示料金 |
|---|---|
| ネズミ | 22,000円〜(税込) |
| ハクビシン | 33,000円〜(税込) |
| アライグマ | 49,500円〜(税込) |
| イタチ | 39,600円〜(税込) |
| コウモリ | 28,600円〜(税込) |
ただし、これらは開始価格です。
対応エリア・加盟店・現場状況によって掲載価格で対応できない場合があることも明記されています。
再発防止まで含めると15万〜30万円程度になる事例もある
アズサポートは2026年7月、自社の害獣駆除5種類の施工実績について、15万円〜約30万円の価格帯が多いとしています。
この料金には、状況に応じて、
- 害獣への対応
- 糞尿清掃
- 侵入口封鎖
- 害虫処理
- 修繕
などが含まれるため、広告の最低料金より高くなることがあります。
これは特定事業者の施工実績であり全国平均ではありませんが、賃貸住宅で高額な施工を検討する際の参考にはなります。
大家負担でも見積もり内容は確認した方がよい
大家・管理会社が費用を負担する場合でも、入居者として施工内容を確認しておくと安心です。
特に、
- いつ施工するか
- 室内へ入る必要があるか
- 薬剤を使用するか
- 家具の移動が必要か
- 何日かかるか
- 再発確認を行うか
を確認します。
入居者が負担する場合も最低料金だけで業者を選ばない
入居者負担になった場合でも、ネット上の「○円〜」だけを見て業者を決めないようにします。
国民生活センターには、格安のネット広告から高額請求につながった害虫・害獣駆除サービスの相談が寄せられています。
複数社の見積もりを比較し、
- 駆除
- 追い出し
- 侵入口封鎖
- 清掃
- 消毒
- 再訪問
- 保証
のどこまで含むか確認してください。
害獣駆除全般の料金については害獣駆除の費用はいくら?で詳しく整理しています。
契約前に管理会社へ確認したい7項目
- 今回の害獣被害を把握しているか
- 他の部屋でも被害が出ていないか
- 管理会社・大家側で業者を手配するか
- 建物側の侵入口を調査するか
- 駆除費用は誰が負担する予定か
- 入居者が業者へ依頼してよいか
- 施工前に書面・メールで承認をもらえるか
「入居者が立て替えて後から請求」は事前確認する
管理会社から「先に自分で業者を呼んでください」と言われた場合も、可能なら、
- どこまでの作業が対象か
- 上限金額
- 領収書の宛名
- 見積もりの事前承認が必要か
- いつ精算されるか
をメール等で確認します。
口頭だけで「後で払います」と言われた状態で、高額施工を契約するのは避けた方が安全です。
被害原因が分からない場合は先に調査する
費用負担を決めるには、そもそも何が原因なのかを確認する必要があります。
例えば、
外壁の経年劣化による穴 → 建物側の問題
と、
入居者が無断で開けた穴 → 入居者側の問題
では扱いが変わります。
原因が分からない段階で、大家・借主のどちらかが全面的に悪いと決めない方がよいでしょう。
費用負担でもめた場合
大家・管理会社と入居者の間で、
- 誰が原因なのか
- 駆除が必要だったのか
- 修繕費を誰が負担するのか
- 入居者が立て替えた費用を誰が払うのか
について意見が一致しない場合があります。
その場合は、
- 賃貸借契約書
- 修繕に関する特約
- 被害写真
- 管理会社とのメール
- 業者の調査報告書
- 見積書
を整理します。
必要に応じて、自治体の住宅相談窓口、消費生活センター、法律相談などを利用します。
賃貸の害獣駆除は「原因確認→連絡→負担確認」の順で進める
賃貸住宅で害獣が出た場合、最初から「大家負担」「借主負担」と決める必要はありません。
進め方は、
- 音・糞・侵入口などの被害を記録する
- 管理会社・大家へ早めに通知する
- 賃貸借契約書を確認する
- 建物側・入居者側のどちらが原因か調査する
- 誰が業者を手配するか確認する
- 誰が費用を負担するか確認する
- 必要な施工内容を決める
- 高額なら複数見積もりを比較する
という順序が基本です。
建物の構造や老朽化が原因で必要な修繕が生じている場合、原則として貸主の修繕義務が問題になります。
一方、借主の故意・過失や、被害を知りながら長期間放置して拡大させた事情があれば、借主側の負担が問題になることがあります。
害獣の種類ではなく、「なぜ侵入したか」「どの工事が必要か」「誰の責任でその状態になったか」を確認することが重要です。
害獣駆除全体の料金は害獣駆除の費用はいくら?、業者選びは害獣・害虫駆除業者の選び方、比較候補は害獣駆除業者おすすめ5社も確認してください。
参考にした主な情報
- 法務省「賃貸物の修繕等(民法第606条関係)」
- 法務省「賃借人の通知義務(民法第615条関係)」
- 国土交通省「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集・修繕」
- 国土交通省「賃貸住宅標準契約書」
- 東京都「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」
- 練馬区「集合住宅のねずみ対策」
- 国民生活センター「作業後に高額請求する害虫駆除トラブル」
- 害獣駆除110番「料金・費用のご案内」
- アズサポート「害獣駆除の費用相場」
法令・公的情報・料金情報は2026年9月13日時点で確認しています。実際の費用負担は、賃貸借契約、被害原因、建物の状態、借主の故意・過失、通知時期などによって異なります。本記事は一般的な判断材料を整理したもので、個別契約の法的判断を確定するものではありません。
