床下のコンクリート基礎に、茶色い土や泥を盛ったような筋が上へ伸びている。束石から床束へ細い土のトンネルのようなものが続いている。
こうした痕跡は、シロアリが作る「蟻道(ぎどう)」の可能性があります。
日本しろあり対策協会も、シロアリ被害を自分で確認するときの代表的な手がかりとして、基礎・束石・土台などに作られる蟻道を挙げています。
ただし、茶色い筋や土の塊を見つけただけで、すべてシロアリと断定できるわけではありません。
普通のアリ類が似た通路を作る場合がありますし、クモの巣、土汚れ、モルタルの付着などを蟻道と思うこともあります。
また、アメリカカンザイシロアリのように、蟻道を作らず、砂粒状の糞を排出するシロアリもいます。
この記事では、蟻道の基本的な特徴、見つかりやすい場所、似たものとの違い、見つけたときの対応まで整理します。
シロアリ対策全体については、シロアリ対策の総合ガイドも確認してください。
シロアリの蟻道とは?
蟻道とは、シロアリが地中などから建物内部へ移動するために作るトンネル状の通路です。
文部科学省の資料では、イエシロアリやヤマトシロアリが、土・木粉・排出物などを使って、基礎コンクリートや束石、床束の表面に蟻道を構築すると説明されています。
シロアリは光や乾燥を避けながら活動するため、むき出しのコンクリート表面をそのまま歩くのではなく、こうした通路を作って移動することがあります。
住宅で蟻道が疑われる場合は、
- 地面・土壌側から上へ伸びる
- 基礎や束石の表面に沿っている
- 木材へつながっている
- 土や泥を盛り付けたように見える
- 線状・トンネル状に連続している
といった特徴を確認します。
蟻道が見つかりやすい場所
日本しろあり対策協会では、シロアリの発見場所として、基礎、束石、土台などを確認するよう案内しています。
住宅では、次の場所を重点的に見ます。
| 場所 | 確認すること |
|---|---|
| 基礎コンクリート | 地面側から上へ伸びる泥状の筋 |
| 束石 | 束石から床束・木部へ続く土の通路 |
| 床束 | 表面に土を盛ったような線がないか |
| 土台 | 基礎から木部へ蟻道が到達していないか |
| 配管まわり | 床・基礎を貫通する部分の隙間 |
| 玄関・浴室周辺 | 床下から確認しにくい部分や湿気の多い場所 |
特にヤマトシロアリは、日当たりが悪く、湿気が多く、比較的暖かい場所で被害が見つかりやすいとされます。
台所、洗面所、トイレ、浴室などの床下も確認対象になります。
基礎にある茶色い泥の筋は蟻道を疑う
一般の住宅で最も気づきやすいのが、コンクリート基礎の表面に付着した土色・茶色の筋です。
蟻道では、地面付近から基礎の上部、さらに土台などの木材へ向かって連続していることがあります。
単なる泥は表面へ不規則に付着しているだけの場合がありますが、蟻道では移動経路として一定方向へ伸びていることが手がかりになります。
ただし、見た目だけで100%判定する必要はありません。
怪しい場合は、位置が分かる写真と接写を残し、他の被害サインも確認します。
「蟻道」と「蟻土」は違う
シロアリ被害を調べると、「蟻道」と「蟻土」という言葉が出てきます。
似ていますが、確認する状態は少し違います。
蟻道
シロアリが移動するために作るトンネル状の通路です。
基礎、束石、床束などの表面に、土の筋として見つかることがあります。
蟻土
日本しろあり対策協会では、シロアリが風や光を避け、適切な湿度を保つために、木材の割れ目や継ぎ目へ排出物や土砂を詰めたり盛り上げたりしたものを蟻土としています。
つまり、
- 表面を長く移動する通路 → 蟻道
- 木材の割れ目や隙間へ詰めた土 → 蟻土
というイメージで確認すると分かりやすくなります。
蟻道だけでなく木材の割れ目に土が詰まっていないか見る
基礎の泥の筋がはっきりしなくても、木材の隙間に不自然な土が詰まっている場合は、シロアリ被害の手がかりになります。
たとえば、
- 土台のひび・割れ
- 木材同士の接合部
- 床束周辺
- 柱の下部
へ泥のようなものが詰められている場合は、蟻土の可能性を確認してください。
普通のアリでも似た通路を作ることがある
日本しろあり対策協会の資料では、普通のアリ類もシロアリの蟻道に似た通路を作る場合があるとされています。
したがって、
「土の筋を見つけた=シロアリ確定」
とは考えない方がよいでしょう。
シロアリの可能性を高める材料は、
- 地面から木材へ向かう蟻道
- 木部に蟻土がある
- シロアリの羽アリが出た
- 木材内部に特徴的な食害がある
- 床や柱に被害がある
などです。
羽アリが出ている場合は、シロアリの羽アリの見分け方も確認してください。
蟻道とクモの巣は見間違うことがある
床下では、地面から壁や基礎へ伸びるクモの巣などを蟻道と見間違うことがあります。
日本ホームインスペクターズ協会の資料でも、シロアリの蟻道と地グモの巣は見分けづらい場合があるとされています。
クモの巣では糸状の繊維が混ざった筒状構造になる一方、シロアリの蟻道は土などを使った構造です。
ただし、硬さや崩れ方だけで断定する必要はありません。
古さ・湿度・材料によって状態は変わるため、疑わしいものは壊して確認するより、写真を残して専門調査で確認した方が確実です。
硬い・柔らかいだけでは蟻道を判定しない
インターネット上では、
- シロアリの蟻道は硬い
- 蟻道は簡単に崩れる
という一見反対の説明が見つかることがあります。
実際には、作られてからの時間、湿気、使われている土や木粉などで状態は変わります。
そのため、指で押した硬さだけを見分け方の中心にするのは避けます。
より重要なのは、
- どこからどこへ続いているか
- 土状の材料で作られているか
- 木部へ到達しているか
- 他のシロアリ被害サインがあるか
です。
蟻道を見つけても自分でむやみに壊さない
蟻道らしいものを見つけると、中にシロアリがいるか確認するために剥がしたくなるかもしれません。
しかし、住宅所有者が識別目的で広い範囲を壊す必要はありません。
蟻道は、
- どこから侵入しているか
- どの木材へ向かっているか
- 被害範囲をどこから調べるか
を判断する手がかりになります。
まず写真を撮り、位置を記録してください。
調査時に専門業者が必要な部分を確認すれば十分です。
殺虫スプレーだけを吹きかけても建物内部の被害確認にはならない
蟻道の表面に見えているシロアリだけを殺虫しても、地中や木材内部にいる集団全体を確認・処理できたことにはなりません。
また、蟻道の場所を消してしまうと、侵入位置の手がかりが減る場合があります。
すでに蟻道ができているなら、表面の虫だけに対処するより、建物内の被害範囲を調べる方が重要です。
蟻道があれば現在もシロアリが活動している?
蟻道を見つけたことは、シロアリがその場所へ通路を作った重要な痕跡です。
ただし、残っている蟻道だけから「現在この瞬間も活動中」とまでは断定できません。
過去の施工後に古い蟻道が残っているケースも考えられます。
活動状況を判断するには、
- 新しい蟻道の伸長
- 生きたシロアリ
- 新しい食害
- 羽アリ
- 他の場所の蟻道
などを含めて調査します。
ベタ基礎でもシロアリは絶対に出ないわけではない
「うちはベタ基礎だから蟻道はできない」と考えるのも避けた方がよいでしょう。
日本しろあり対策協会の試験では、クラックなどの欠陥がない厚さ10cmの一体打ち鉄筋コンクリートについて、シロアリが10年間貫通しなかったことが確認されています。
つまり、健全なコンクリートそのものをシロアリが容易に食い破って侵入するという意味ではありません。
一方、実際の建物には、
- 基礎の継ぎ目
- 配管の貫通部
- 基礎外周
- 化粧モルタルとの隙間
- ひび割れ
など別の侵入経路が存在する場合があります。
ベタ基礎であることだけを理由に、蟻道らしい痕跡を無視しないでください。
配管まわりの土の盛り上がりも確認する
床下では、給排水管などが基礎・床を通過する部分に隙間ができる場合があります。
その周囲へ不自然な泥・土が盛り上がっている場合は、蟻道・蟻土がないか確認します。
ただし、施工時のモルタル・土汚れ・断熱材なども存在するため、配管まわりの茶色いものすべてがシロアリという意味ではありません。
地面側から連続しているか、木部へ到達しているかも見てください。
基礎の外側にも蟻道ができることがある
蟻道は床下だけにできるものではありません。
日本しろあり対策協会の報告でも、住宅の外側にある基礎表面へ蟻道が構築された例があります。
外周で、
- 基礎と外壁の境目
- 玄関ポーチ付近
- 地面から立ち上がる基礎
に不自然な泥の線がないか確認しておくと、床下へ入らなくても発見できる場合があります。
床下へ無理に潜って確認する必要はない
蟻道は床下で見つかることが多いものの、一般の住宅居住者が狭い床下へ奥まで入る必要はありません。
床下には、
- 配管
- 電気配線
- 断熱材
- 釘や金物
- 狭い空間
などがあり、安全に移動できない住宅もあります。
点検口から安全に見える範囲や、建物外周から確認できる場所を記録し、奥の調査は専門業者へ依頼できます。
木くずが落ちているだけなら蟻道とは別に考える
「シロアリ被害では木くずが落ちる」と考える人もいますが、木くず・粉と蟻道は別の痕跡です。
地中性のヤマトシロアリ・イエシロアリでは、蟻道・蟻土・食痕などが重要な手がかりになります。
床や家具の下に木粉のようなものがあるだけなら、別の木材害虫や建材由来の粉なども候補になります。
「粉がある=シロアリ」とは判断しないでください。
砂粒のような小さな糞なら乾材シロアリも確認する
例外として重要なのが、アメリカカンザイシロアリなどの乾材シロアリです。
日本しろあり対策協会によると、乾材シロアリは、地中性シロアリのような特別な蟻道を作らず、乾燥した木材内部で生活します。
被害材からは、乾燥した砂粒状の糞を排出します。
アメリカカンザイシロアリの糞は、拡大すると長径約1mm前後の米俵状で、表面に筋が見られることがあります。
したがって、
- 基礎には蟻道がない
- 乾燥した柱・家具等から砂粒のようなものが落ちる
- 掃除しても同じ場所へ粒が増える
場合は、地中性シロアリとは違うタイプも考慮します。
木材の食痕も蟻道と一緒に確認する
日本しろあり対策協会では、シロアリ被害を確認する手がかりとして木材の食痕も挙げています。
地中性シロアリは木材内部を食害するため、表面だけでは分からない場合があります。
被害が進むと、
- 木材内部が空洞化する
- 表面だけ残る
- 床・建具に異常が出る
ことがあります。
ただし、自分で柱・土台へドライバーを突き刺したり、構造材を削ったりする必要はありません。
蟻道と一緒に専門調査で確認してもらう方が安全です。
羽アリも出ているならシロアリの可能性をさらに確認する
蟻道らしい土の筋に加えて、室内や建物周辺から羽アリが大量に出ている場合は、シロアリ被害を確認する重要性が高まります。
シロアリの羽アリは、
- 4枚の羽がほぼ同じ大きさ
- 胴体にアリのようなくびれがない
- 触角が数珠状
という特徴があります。
羽アリだけで判断する場合はシロアリと羽アリの見分け方を確認してください。
蟻道を見つけたら写真を残す
点検を依頼する前に、自分でできる最も簡単なことが記録です。
次の写真を残してください。
- 蟻道らしい筋の全体
- 接写
- 地面側の始点
- 木部側の到達位置
- 周囲の基礎・配管が分かる写真
メジャー等を近くに置ける安全な場所なら、大きさも分かるように撮影できます。
無理に床下へ入る必要はありません。
蟻道を見つけても「家全体が手遅れ」とは限らない
蟻道があることは調査すべき重要なサインですが、蟻道一本だけで建物全体の被害範囲は判断できません。
一方で、日本しろあり対策協会は、蟻道が複数見つかった住宅で、部分施工だけでは建物全体を確実に防除できないと案内しています。
そのため、
「蟻道だけ削って終わり」
ではなく、他に蟻道・食害がないかを確認してから施工範囲を決めます。
調査では何を確認してもらう?
シロアリ業者へ点検を依頼する場合は、蟻道の有無だけでなく、次の項目も確認してもらいます。
- 蟻道が本当にシロアリ由来か
- 現在活動中か
- シロアリの種類
- 侵入位置
- 他にも蟻道がないか
- 土台・床束等の食害
- 湿気・漏水等の要因
- 施工範囲
- 駆除と予防のどちらが必要か
無料点検を利用するときの確認事項はシロアリ無料点検の確認ポイントで整理しています。
見積もりは蟻道がある場所だけで決めない
蟻道が一か所見つかったとしても、そこだけ処理すれば十分かは現地調査によります。
見積もりでは、
- 施工する面積
- 処理する部位
- 使用する工法
- 薬剤
- 保証
- 追加料金条件
を確認してください。
料金の考え方はシロアリ駆除の費用、実際の依頼先を比較する場合はシロアリ駆除業者の比較へ進んでください。
突然訪問してきた業者に蟻道を指摘された場合
「基礎に蟻道があります」「今すぐ駆除しないと危険です」と訪問業者から指摘されるケースもあります。
実際に蟻道である可能性はありますが、その場で高額契約を即決する必要はありません。
まず、
- 指摘された場所の写真を自分でも残す
- 何を根拠に蟻道と判断したのか聞く
- 見積書を受け取る
- 必要なら別の会社にも確認してもらう
ことができます。
点検商法や高額請求への注意はシロアリの悪徳業者を避ける方法で整理しています。
シロアリの蟻道についてよくある疑問
シロアリの蟻道はどんな見た目ですか?
基礎・束石・床束などの表面に、土や泥を盛ったような線状・トンネル状の通路として見つかることがあります。地面側から木部へ伸びている状態は重要な手がかりです。
基礎の茶色い線は全部シロアリですか?
いいえ。普通のアリ類が似た通路を作る場合があり、単なる土汚れ等の可能性もあります。蟻土、羽アリ、食痕なども合わせて判断してください。
蟻道を少し壊して確認してもいいですか?
調査では一部を確認することがありますが、居住者が識別目的でむやみに壊す必要はありません。侵入経路の手がかりになるため、まず写真と位置を残して専門調査へつなげる方が分かりやすいでしょう。
蟻道が一本あればシロアリ駆除は必要ですか?
蟻道が本当にシロアリ由来なら、建物へ侵入した痕跡なので点検する価値があります。ただし現在の活動状況・被害範囲・必要な施工は、蟻道一本だけでは決まりません。
ベタ基礎なら蟻道はできませんか?
健全な一体打ちコンクリート自体はシロアリが容易に貫通するものではありませんが、実際の住宅には継ぎ目、配管貫通部、外周、ひび割れなど侵入経路となり得る場所があります。ベタ基礎でも蟻道がないか確認する意味はあります。
木くずが落ちていたらシロアリですか?
木くずだけでは断定できません。地中性シロアリでは蟻道・蟻土・食痕が重要なサインです。一方、乾材シロアリでは乾燥した砂粒状の糞を排出します。
砂のような粒が柱の下にあります
乾材シロアリの糞も候補になります。アメリカカンザイシロアリなどは特別な蟻道を作らず、乾燥した木材から砂粒状の糞を排出します。同じ場所へ繰り返し粒が落ちる場合は専門調査を検討してください。
クモの巣と蟻道はどう違いますか?
クモ類の筒状巣では糸状の繊維が確認できる場合があります。蟻道は土などを利用した構造です。ただし古い巣では見た目が分かりにくいため、硬さだけで断定せず写真を残して確認してください。
基礎の外側に蟻道があります
シロアリの蟻道は床下だけでなく、基礎外側で発見されることもあります。地面からどこへ続いているかを記録し、住宅内部への侵入がないか確認してもらいます。
蟻道は「泥の筋」だけでなく場所と他のサインで見分ける
シロアリの蟻道は、基礎・束石・床束・土台などに作られる、土砂等を使ったトンネル状の通路です。
見分けるときは、
- 泥・土を盛った線状の構造か確認する
- 地面から木材方向へ続いているか見る
- 木材の割れ目に蟻土がないか確認する
- 羽アリ・食痕など別のシロアリサインを見る
- 普通のアリ・クモの巣・単なる汚れの可能性も残す
- 蟻道をむやみに壊さず写真と場所を記録する
- 疑わしい場合は床下・建物全体の点検を依頼する
という順番で確認すると分かりやすくなります。
「蟻道がある=住宅全体が深刻」というわけではありませんが、シロアリが建物へ侵入した重要なサインになり得ます。
羽アリも出ている場合はシロアリの羽アリの見分け方、これから点検する場合はシロアリ無料点検、費用を確認する場合はシロアリ駆除の費用へ進んでください。
主な参考情報(2026年9月14日確認)
- 公益社団法人 日本しろあり対策協会「誰でも簡単に確かめられるシロアリ発見法を教えて下さい」
https://www.hakutaikyo.or.jp/faq/1826.html - 公益社団法人 日本しろあり対策協会「シロアリ探知の手がかりと時期」
https://www.hakutaikyo.or.jp/pdf/shiroari_005.pdf - 公益社団法人 日本しろあり対策協会「“乾材シロアリ”と言われるシロアリとはどんなシロアリですか」
https://www.hakutaikyo.or.jp/faq/1787.html - 公益社団法人 日本しろあり対策協会「建物でしろありの被害にあいやすい場所はどこですか?」
https://www.hakutaikyo.or.jp/faq/2277.html - 公益社団法人 日本しろあり対策協会「研究・開発事業」
https://www.hakutaikyo.or.jp/jigyou/kenkyu - 文部科学省「木の学校づくり手引書」
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/27/1414729_4.pdf - 特定非営利活動法人 日本ホームインスペクターズ協会「第11回公認ホームインスペクター資格試験」
※泥状の筋・土の盛り上がりだけでシロアリと100%特定することはできません。住宅の構造材を自分で削ったり、床下へ無理に潜ったりせず、蟻道らしい痕跡は写真・場所を記録したうえで必要に応じて専門調査へつなげてください。
